自分勝手な映画批評
ローグアサシン ローグアサシン
2007 アメリカ 103分
監督/フィリップ・G・アトウェル
出演/ジェット・リー ジェイソン・ステイサム ジョン・ローン 石橋凌
タバコを吸い始めるクロフォード(ジェイソン・ステイサム)。一緒にいたトム(テリー・チェン)は「それは口唇期固着であり、口が寂しいだけだ」と言って爪楊枝を勧めるのだが、クロフォードは聞く耳を持たない。

過去に生きても苦しいだけだ

アサシンとは暗殺者の意味。ローグと呼ばれる謎の暗殺者を中心に、FBI、チャイニーズマフィア、日本のヤクザが入り交じって繰り広げられるアクション作品。

作品の内容自体は異なるのだが、作品、あるいは映像のタッチはジェイソン・ステイサムの出世作「トランスポーター」シリーズに似ているように思う。そういった意味では「トランスポーター」のイメージのジェイソン・ステイサムが好きな人には、演じるキャラクターは違うのだが、比較的馴染みやすい作品ではないかと思う。

激しい銃撃戦の中、FBI捜査官のトムは、同僚のFBI捜査官クロフォードを撃とうしていた正体不明で伝説の暗殺者ローグを仕留めた。但し、ローグは海に落ちた為、確実な生死の確認は出来なかった。後日、トムの自宅で双方の家族を交えて会う約束をしていたトムとクロフォード。しかし、クロフォードが向かっている最中に、トムは妻と幼い娘と共に殺され、自宅は焼かれてしまった。惨劇の後の荒廃したトムの自宅に到着したクロフォード。そこでクロフォードは、ローグが必ず使用しているチタンの薬きょうを見つけるのだった。その日以来、ローグを追っているクロフォード。トムの死より3年後、ヤクザが経営するサンフランシスコのクラブで、そこに詰めているヤクザが大人数殺害される事件が発生する。現場に駆け付けたクロフォードは、そこでチタンの薬きょうを見つけるのだった。

本作のポイントとして、いの一番に挙げられるのはキャステングの妙ではないかと思う。

まずは、ジェット・リーとジェイソン・ステイサムの共演。この二人、本作以前には「ザ・ワン」で、本作以降では「エクスペンダブルズ」でも共演しているので因縁のある関係なのかも知れない。

持ち前の卓越したカンフースタイルをベースに中国系らしいキレのある、しなやかなアクションで攻めるジェット・リー。対するステイサムは、欧米人ならではとでも言うべき豪腕なアクションで迎え撃つ。異種格闘技とまでは行かないが、ルーツを伴う資質を感じさせる東西のアクションスターのマッチメイクは大きな見どころである。

この二人のコントラストはカーアクションにも表れている。洗練されたスパイカーC8スパイダーで颯爽と逃げるジェット・リーを豪快なシボレー・シェベルSSでパワフルに追うステイサム。その迫力ある攻防もさることながら、中々センスを感じさせる車のチョイスも実に良い。

本作のステイサムの役柄は、どこか「ブリット」のスティーブ・マックイーンを意識しているように感じる。サンフランシスコを拠点とし、ジャケット姿でマッスルカーを駆るストイックで玄人肌の刑事。カーチェイスのシーンで、あえて名所の坂道を使用しなかったのは、深読みではあるのだが、却って「ブリット」への意識の表れのように感じる。

ジェット・リーとジョン・ローンの共演も見ものである。「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」「ラスト・エンペラー」で名を馳せたジョン・ローン。意地悪く言えばピチピチの鮮度が保たれているとは言い難い。だが、同じ中華圏出身のスター同士、しかも毛色の違う俳優同士の共演は夢の共演だと言って差し支えないだろう。

そして日本人にとって大きいのは石橋凌の出演であるだろう。本作の石橋は、海外の作品だからといっても流される事なく、自分の流儀を頑に貫いている。その姿には感銘を受けるし、また、存在感たっぷりに結果を残しているのは誇らしくも感じる。

本作にはケイン・コスギも出演している。あまり大きな役ではないのだが、日本人ならば目につくところだろう。ケイン・コスギとジェット・リーの対決シーンが、ごく僅かではあるのだが存在するのも嬉しいサプライズだ。

日本のヤクザがキーとなる作品なので、もちろん日本的な描写が存在する。ツッコミどころはあるのだが、海外作品という大目で見れば許容範囲、納得出来る範囲に収まっていると言えるだろう。

決して大作と呼べる作品ではないだろう。そればかりかB級の香りさえも立ち篭める。ただ、様々な要素を取り入れているにもかかわらず、手際よくパッケージングした能力は見事であり、トータルの完成度は高い。土壇場でミステリーを効かせるのは憎い演出だ。


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