自分勝手な映画批評
ブリット ブリット
1968 アメリカ 113分
監督/ピーター・イェーツ
出演/スティーブ・マックイーン ロバート・ボーン ジャクリーン・ビセット
上院議員のチャーマース(ロバート・ボーン)は、上院の公聴会の証人であり、シカゴから刺客の手を逃れてサンフランシスコに辿り着いたジョニー・ロスを保護するようにブリット刑事(スティーブ・マックイーン)に指示をする。

マックイーンが魅せる、硬派な刑事ドラマ

サンフランシスコを舞台に、証人保護の命を受けた刑事が繰り広げるアクション作品。

意地悪く言えば地味な作品だ。事件そのものも決して派手で大掛かりではなく、また、俳優達の演技も感情に分かりやすく訴えるような抑揚がない。盛り上げる効果となる劇中曲も最低限しか用いられていない。しかし、大人の、男の渋みが本作には詰まっている。賑やかしの装飾を排除したような演出が、重いリアリティーを上手く表現しており、深い味わいを感じさせる。

主人公の刑事フランク・ブリットはスーパーマンではない。彼は評判も高い腕利きの刑事ではあるが、それはあくまでも平均以上に優秀だといったレベルであり、名前が作品タイトルになっている映画の主人公としては、物足りないだろう。しかし、その事が大人の刑事ドラマとしての醍醐味をもたらしている。

信念に基づき、真実を追い求める姿勢は、職業意識というよりも、刑事としての本能であろう。但し、もちろんブリットは、警察という組織の人間である。そして、危険で惨事を目の当たりにする職業であるが、生身の人間である。しかし、彼は一匹狼のように頑な姿勢を貫く。だが、そこには、強さを固持するがゆえの哀愁が漂う。

やはりポイントはスティーブ・マックイーンだ。彼は男性的でタフなプロフェッショナル・スペシャリストを演じさせれば抜群に様になる。それこそが今日でも愛され続ける理由であろうし、また、その魅力が活かされた本作が彼の代表作の1つに挙げられているのだと思う。マックイーンが演じる事によりブリット刑事が俄然と魅力的になったと思うし、作品のクオリティーに大きく影響したのは間違いない。

本作のハイライトにカーチェイスシーンが挙げられる。サンフランシスコの勾配豊かな地形をを活かした迫力のシーンは、「大脱走」のバイクでのアクションシーンと並ぶ、マックイーンにとっての代名詞のようなシーンであり、さらには映画史にも惨然と輝く名シーンではないかと思う。モータースポーツにも情熱を注いだ彼には車でのアクションが良く似合う。籠もりがちに轟く、小刻みに弾けるエキゾーストノート、酷使され、甲高い悲鳴と白煙を上げるタイヤ。使用されたマスタングも本作を語り継ぐ上で不可欠な重要アイテムだ。

今思えば、ダーティハリーのようにシリーズ化されてもおかしくない作品のように感じる。もちろん、その願いは、もはや叶わぬ夢である。しかし、本作の持つスピリットは現在にも脈々と受け継がれているように思える。


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