自分勝手な映画批評
トランスポーター トランスポーター
2002 フランス/アメリカ 93分
監督/ルイ・レテリエ コリー・ユン
出演/ジェイソン・ステイサム スー・チー フランソワ・ベルレアン
地下駐車場で待機しているフランク(ジェイソン・ステイサム)。時間になり車を走らせ共同投資組合のビルの前に到着すると、そのビルから出て来た四人組の強盗が彼の車に乗り込んだ。

ルールを犯したプロフェッショナル

プロの運び屋(トランスポーター)が巻き込まれる騒動を描いたアクション作品。

プロフェッショナルな仕事振りに接するのは気持ちの良いものだ。身近なところでは、例えば、飲食店や販売店の店員の適格でスマートな対応に、気分良くさせられでもしたならば、ついついその店に、また足を運びたくなってしまう。さらに言えば私は、その折り目正しく謙虚な接客態度の中に、仕事に対する自信と誇りを感じとれるのならば、尚更、感心してしまう。

本作はストイックなまでにプロフェッショナルに徹し、その極みから得た自信と誇りを胸に持する、寡黙で強固な男の物語だ。そのキャラクターは、その態度や姿勢はもとより、職業柄、そして男の面構えから、どこかゴルゴ13を彷彿とさせる。

ジェイソン・ステイサムが演じるフランクはプロフェッショナルを全うする為に、ルールと称して自らの行動に制限を設ける。自分の出来る事だけをやる事が、必ずしもプロフェッショナルとは言えないだろうが、仕事と責任を絶対的な対(つい)として考えている面では、まぎれもなくプロフェッショナルだと言えるだろう。

しかし、フランクは仏心から、自らに課したルールを自ら破る。そこがフランクとゴルゴ13の違いであり、トランスポーターとスナイパーの違いであろう。

何故かカーアクション作品に所縁のあるジェイソン・ステイサム。本作の見どころも、やはりアクションだ。もちろん、カーアクションシーンの迫力は凄いのだが、カーアクションシーンが全編に渡って繰り広げられる訳ではなく、生身の肉体での挌闘シーンにも重きを置いている。

その挌闘シーンが、実に良く練られている。系統でいえば、ジャッキー・チェンを思わせるような、手数が多く、アイデアをふんだんに取り入れた、コミカルでアクロバチックなアクションなのだが、愛嬌のある顔のジャッキーと無愛想なステイサムとでは、同じアクションでも随分と印象が違ってくる。

ジャッキーのアクションはユーモラスであるが、ステイサムの本作でのアクションもジャッキーとは違った、無愛想ゆえのユーモアを感じる。

それもあってか、シリアスなストーリーにもかかわらず、コメディーにとれる感覚もあり、その辺りが本作の面白味ではないかと思う。

整合性を考えると疑問に思う節もあるのだが、エンターテインメントに徹した作風、尚かつ、単純とは言わないが、決して複雑ではないストーリー展開は路頭に迷う事がなく、大いに楽しめる作品だ。

それにしても、わざわざ私がピックアップしているだけかも知れないが、ジャン・レノ、ブルース・ウィリス、そして本作のジェイソン・ステイサムとリュック・ベッソンが起用する俳優は、どこか似たような雰囲気を持っているような気がする。


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