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たった一部燃え残った、怨みの炎に火がついた 修羅雪姫の続編。但し、主人公は同じなので繋がりはあるものの、前作で物語は完結しているので、本作は前作とは関係のない新たな物語である。 本シリーズをモチーフにしたとされるキル・ビルシリーズは後編(vol.2)がある事で主人公のキャラクターに明らかに深みが加わった。本作には、そこまでの作用があるとは言い難いが、それでも本作がある事で、主人公のキャラクターに前作以上の幅を感じる事は出来るだろう。 亡き母の無念を果たした雪だったが、警察と刺客に追われる身であった。逃亡に疲れた雪は観念し、警察に囚われ、死刑を宣告される。死刑執行の当日、雪を護送している馬車を何者かが襲い、雪を助け出した。助けたのは秘密警察で、秘密警察の親玉である菊井は、雪に反逆者される徳永乱水の元に潜り込み、機密書類を捜し出す命を与える。 おどろおどろしい雰囲気は踏襲しているが、作風は前作とはかなり違っている。まず顕著に感じるのは、舞台となる時代の描写であろう。前作同様、本作も明治を舞台にしているのだが、前作が、およそ明治とは思えないチャンバラ時代劇の様相を強く感じさせていたのに対し、本作は時代に合った描写になっていると言えるだろう。この点だけでも随分と印象は異なってくる。 また、ストーリーが主人公の雪を主体にして展開されるのではなく、国家権力とそれに立ち向かう反逆者とされる者との対立が軸となっている点も前作とは異なっている。主人公がストーリーの中心にいないのは摩訶不思議ではあるのだが、その事が却ってアンチヒーローを主人公にした物語で、歪なカタチになってしまっていた前作での勧善懲悪を、ある程度正常に戻す作用をもたらしたと言えるだろう。 前作でも熟練の役者が脇を固めていたのだが、雪の一途な想いとその役柄に答える梶芽衣子の演技がすべてを淘汰してしまっている印象があった。それはそれで決して悪くないと思うし、また、その状況下でも脇役陣は良い仕事をしていたと思う。ただ、本作は雪が一歩引いた立場なので、脇に配された俳優たちの存在感が鮮明になっていると言えるだろう。 濃い俳優たちが顔を揃え、それぞれが存分に持ち味を発揮している。その中でも伊丹十三が印象に残った。私には彼の後年の姿である映画監督のイメージが焼き付いてしまっていたのだが、俳優としても優秀であったと改めて実感させられた。 |
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