自分勝手な映画批評
キル・ビル vol.2 キル・ビル vol.2
2004 アメリカ 136分
監督/クエンティン・タランティーノ
出演/ユマ・サーマン デビッド・キャラダイン ダリル・ハンナ
テキサス州エル・パソのトゥー・パインズ教会では結婚式の予行演習が行なわれていた。そこへ呼ばれていない筈のビル(デビッド・キャラダイン)が現れた。

女ごころの怨み節

キル・ビル vol.1の続編。舞台は前作の日本からアメリカ、メキシコへと移る。

続編であるので、当然ストーリーには一貫性はある。しかし、作品の雰囲気はガラリと変わっている。前作で感じた、血みどろではあるのだが、どこかポップな感覚は鳴りを潜め、作品全体のリズムはスローになっており、それ故に寂しげな哀愁を感じさせる。

それには舞台となった、西部劇に似つかわしいような土地柄も影響していると思うのだが、何より心理描写に重きを置いているのが原因ではないかと思う。前作の心理描写だけでもショーアップしたアクション作品としては十分合格で、問題ないと思うのだが、深く掘り下げた事で、作品世界を一層豊かにしてると言えるだろう。本作では主人公の復讐の根拠が、より鮮明になる。

本作は前作同様にバイオレンスだ。だが、前作のような血なまぐさい描写は少ない。しかし、それでもバイオレンスに感じるのは、バイオレンスの舞台を心理上に移しているからなのではないかと思う。心理上でのバイオレンスは、前作の過激な描写を超えていると言っても良いかも知れない。

また、そのように探究させた心理描写を踏まえて考えると、本作を究極のラブストーリーと捉える事も出来るのではないかと思う。本来なら、決して常人では理解出来ないイレギュラーな愛のカタチではあるだろう。だが、愛と憎悪の震源が同じ場所だと解釈出来れば、実に壮大で、かつ生々しいラブストーリーだと感じるだろう。そう考えれば、表面上で派手の限りを尽くした前作が、より一層意味を成してくるのだと思う。

前作と本作を通じて、冷静に考えてみれば極めて不可思議で不可解な、もっと言えば馬鹿馬鹿しい作品であると私は思う。だが、それらを打ち消すパワーが両作には漲っている。そして何より続編として本作がある事で、単に荒唐無稽なストーリーとアクションを描いた作品ではなく、決して標準的ではないのだが、その裏にある心理、さらには、そこから発せられる生身の人間らしさが感じられ、もうひとつ上の頂きへと到達した作品になったと言えるのではないかと思う。

前作とは異なる作風に導いた本作のポイントとなるキャラクターは、ビルの弟であるバドではないかと思う。血気盛んなキャラクターが多い中、バドだけは明らかに異質。そんなバドを、実に味わい深く演じたマイケル・マドセンが素晴らしく印象に残った。

本作に登場する生きたまま棺桶に閉じ込められるエピソードは、テレビドラマ「CSI:科学捜査班」でタランティーノが演出した回にも存在する。確かに恐ろしい状況ではあるのだが、2度までも同じ状況を設定したという事は、タランティーノにとって何かしらのこだわりがあるのではないかと想像してしまう。このエピソードを用いた実際の意図は分からないのだが、奇才とも呼ばれる彼の思考や嗜好の一片が垣間見れるようで興味深く感じた。

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