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そなたは修羅の子、御仏も見放したるほどの 原作は小池一夫原作、上村一夫作画による漫画。 何ともユニークなタイトルだ。言うまでもなくグリム童話の「白雪姫」を意識してのタイトルであろう。洒落の効かせ具合から察すると、もしかしたらタイトルありきで原作を執筆したのではないかと勘ぐりたくなる程である。但し、修羅を掲げたのには大きな意味があり、相当の覚悟もある。「白雪姫」も恐ろしさを感じる面を持ってはいたのだが、本作は一切の甘味を残さない、まさに退路を絶ったバイオレンスである。 舞台は明治時代。悪党四人の都合の良い保身の為に夫を無惨に殺された小夜は、その内の一人を殺し投獄される。それでも残りの三人への憎しみが治まらない小夜は、彼らへの復讐の為だけに獄中で子を身ごもり、その想いを生まれてきた娘・雪に託して死んでしまう。生まれながらに宿命を背負った雪は、刺客稼業を勤めながら復讐の旅に出る。 世の中には、生まれる前から進路が決まっている人もいるのかも知れないが、それが親の敵討ちとは非運以外の何ものでもないだろう。本作の原動力となるのは怨念であり執念である。それらが本作のすべてを支配していると言って良いだろう。精神的な描写の重い本作は見た目にも過激であり、血しぶきが舞い上がるバイオレンスが多く見受けられる。そういった面をすべて包括すると本作の作風は、どこか劇画チックであるとも言えるだろう。 本作の基本は勧善懲悪だ。しかし、必ずしもそうとは言い切れないのも本作の特徴であろう。積年の怨みは「目には目を」の精神で遂行される。しかしそれは結局は同じ穴のムジナ。どこかで断ち切らなければ、あるいは違う手段で解決しなければ、正義と悪の立場を入れ替えながら果てしなく続いて行くのだろう。 主人公の雪を演じた梶芽衣子が素晴らしい。本作の魅力の大半を彼女が担っていると言っても過言ではないだろう。彼女の哀愁が漂う鋭い眼光には台詞や説明等が一切不要の説得力がある。 本作での彼女の魅力には彼女の年齢、若さも大きな影響を及ぼしているように感じる。この若さでこれだけの貫禄を出せる事自体大したものなのだが、貫禄を包んでいるのが若くて美しい風貌だからこそ、強さと繊細さが同居した危なげで特有な色気が実現されているように思う。そして、それゆえに主人公の雪のキャラクターが狂気な外道ではなく悲しきヒロインとして本作にしっかりと定着し、輝きを放っているだとも思う。 本作はクエンティン・タランティーノ監督のキル・ビルのモチーフになったとされる作品である。その意味は、本作を観れば容易く理解出来るだろう。両作を見比べてみて、タランティーノが本作をどのようにアレンジしてキル・ビルを完成させたのか、あるいはタランティーノの感性には本作のどの辺りが引っかかったのかが分かるようで面白い。 |
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