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水槽の中の魚 原作はJ・J・コノリーの小説。裏社会に生きる麻薬ディーラーが巻き込まれる騒動を描いた作品。 法律の範囲を外れる裏社会の規律が良く分かる作品だ。ダニエル・クレイグ扮する主人公の麻薬ディーラーは、大ボスに仕えている。「俺がルールブックだ」なんてプロ野球での名言があるが、裏社会ではボスの言う事が絶対、それが何にも勝る法律なのである。 しかもそこは、非人道的な裏社会。道理などは存在しない。ボスの個人的な思惑、もっと言えば機嫌ひとつで全てが支配されてしまうのである。これを違った視点で捕らえると、もし裏社会を仁侠と称するのであれば、それはボスの人柄があってこそという事になるのかも知れない。 表社会と言ったら変だが、一般社会で生活する私達も、ボスや上司から理不尽な無理難題を突き付けられる事があるのかも知れない。だが命を狙われる事は普通では有り得ない。結果として生命に関わる事であったとしても、その最終段階に至るまでに回避する選択肢はあるだろう。時には異義を訴え、反旗を翻す事も出来るだろう。それは自由と平等が保証され、法律に守られているからとも言えるだろう。 だが裏社会では、そうはいかない。ルールはボスであり、すべてがボスの支配下にある。そして場合によっては、即、命と直結する。逆に言えば、命が掛かっているからこそ、立ち向かうならば、生半可ではいられない。やり遂げる為の強い意志と行動力、文字どおり決死の覚悟が必要となってくる。それが無理ならば、決められた囲いの中で生きるしかない。 本作を観て、興味深く感じたのは、人それぞれの器量を意識して描かれている点だ。ボスにはボスの、部下には部下の器量、すなわち、向き・不向きがある。未熟でもボスはボス、熟練していてでも部下は部下。その技量ゆえ、彼らのやりとりの中で立場が逆転する場合もあるのだが、それでも、はっきりとした役割分担、主従関係が結ばれているのが面白く思えた。それは、ある意味、プロフェッショナルだということなのかも知れない。 ダニエル・クレイグ扮する主人公は用心深く、頭が切れるキャラクターだ。それが影響してか、スタイリッシュな作品ではあるが、ユーモアをまぶしてある訳ではなく、重々しく息苦しいとまでは言わないが、いたってシリアスな作風である。 本作はロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ、スナッチのスタッフが多く携わっているらしい。作風の違いを見比べるのも面白いのではないかと思う。 |
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