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最後のスティーブ・マックイーン 作品タイトルのハンターとはバウンティハンター、いわゆる賞金稼ぎの事。本作は賞金稼ぎを生業とする男の生きざまを描いた作品である。 巨悪に立ち向かうアクション作品の主人公と言えば変身する正義のヒーローだ。ただ、それではあまりにも荒唐無稽であるので、現実面を考慮すれば刑事、もしくは刑事程の権力も権限も持ってはいないのだが探偵あたりが相応しいのだろう。本作の主人公の職業である賞金稼ぎも、それらと同じ類いだと言えるだろう。 賞金稼ぎが活躍する作品と言えば西部劇、つまり古い時代を舞台にした作品が主になるだろう。実際、賞金稼ぎは本作の冒頭で触れられているが1900年以降は減少の一途を辿っているらしいので、アナクロなキャラクターだと言えるのかも知れない。だが、現在でもアメリカでは歴とした職業であり、なおかつ格好のエンターテインメントの題材である賞金稼ぎが、あまり現代の作品でフィーチャーされていないのは、そのような理由を踏まえたとしても不思議な感じがする。 但し、本作は賞金稼ぎを正義に据えて勧善懲悪を描いた作品ではない。賞金稼ぎという危険で苦労の多い職業の実態を描いた作品だと言えるだろう。 通称「パパ」と呼ばれるソーソンは腕利きの賞金稼ぎ。一緒に暮らしている恋人のドディーは出産を間近に控えているのだが、ソーソンは仕事が多忙な為に各地を飛び回っていた。ある日、仕事の打ち合わせをしているソーソンに一本の電話が入る。それはソーソンに恨みを持つメイソンという男からのソーソンへの殺人予告だった。 本作を語る上で避けられないのは、本作がスティーブ・マックイーンの遺作である事だ。本作の制作時にはすでに病に侵されていたと聞くが、確かに本作のマックイーンは以前の出演作に比べて覇気がない。ただ、覇気のなさと病の影響を短絡的に結び付けるのは少なからず疑問が残る。ベテランの賞金稼ぎという役柄を全うすべく、あえて覇気なく演じたのではないかと感じるのである。 私がそう感じるのにはマックイーンの前作「トム・ホーン」の影響が大きい。伝説の男の切ない末路を描いた「トム・ホーン」。私の勝手な解釈だが、その「トム・ホーン」にマックイーン自身が自らを重ね合わせ、自らのキャリアにひとまずのピリオドを打ったように感じられた。その私の仮説に則れば、本作は俳優マックイーンの新しい章の幕開けに位置付けられる作品となる。 アクションが主体なのは今までの出演作の多くと同様であるのだが、今までとは少し違った役柄、演技プランで挑んだ本作。それは、積み重ねたキャリアやイメージを活かしつつも、年齢相応に発展させたマックイーンのアクション俳優としてのニュースタイルだったのではないだろうか? 本作は、その第一歩。そう考えると、やはり早過ぎる死は残念で仕方がない。 頼りなくはないのだが、どこか抜け目があり完全無欠だとは言い難い。しかし肝心要はキッチリこなす。そんな人間味のある等身大の男をマックイーンは演じている。余談だが、このスタイルは、意識したかどうかは分からないのだが、「ダイ・ハード」のブルース・ウィリスが受け継ぎ花開かせたように感じる。 今までとは違うと言っても既存のマックイーンらしさは要所で健在である。特にガンアクションでの鋭い眼光はそれまでのマックイーンと何ら変わりなく、マックイーン特有の雄の本能が強烈に感じられる。 遺作なので本作のラストシーンが映画俳優マックイーンの最後の姿である。ストーリーのラストとしても感動あるシーンなのだが、そのような事情も踏まえると、より感慨深くなる印象的なラストシーンである。 |
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