自分勝手な映画批評
ブリッツ ブリッツ
2011 イギリス 97分
監督/エリオット・レスター
出演/ジェイソン・ステイサム パディ・コンシダイン アイダン・ギレン
自宅のソファーで寝ていたブラント(ジェイソン・ステイサム)は起き上がり、テーブルの上にあったウイスキーをマグカップに入れて飲んだ。その時、外に気配を感じた。窓から通りを見下ろすと、少年たちが車を盗もうとしていた。ブラントはハーリングのスティックを手に取り、その場へ向かった。

噂通りの悪党か?

片や粗暴、片や柔和という対照的な刑事がコンビを組んで捜査する、猟奇的連続殺人事件の顛末を描いた作品。原作はケン・ブルーウンの小説。

アメリカのアカデミー賞を選考するアカデミー会員たちはイギリスかぶれ、イギリスコンプレックスだという話を聞いた事がある。その真相は私には分からないのだが、確かに受賞結果を見れば、そういった論調も頷ける。

本作は歴としたイギリス映画である。だが、作風はイギリス的と言うよりもアメリカ的な作品であると言えるだろう。

ロンドンのサウスイースト署のブラントは、暴力的な行動も厭わない問題の多い刑事。ただ、ブラントは強い信念を持っているので、自分の行動を恥じる事も改めるつもりも断じてなかった。そんなブラントを理解しているのは上司のロバーツ警部。ただ、ロバーツは最近妻を亡くして落ち込んでいた。傷心のロバーツを気遣うブラントは、ロバーツの妻の火葬に付き添い、ロバーツと弔いの酒を共にするのだった。ロバーツと別れて帰宅したブラントの元に、婦警が何者かに射殺されたとの連絡が入る。翌日、捜査本部が立ち上がったのだが、本来なら指揮を執る筈のロバーツは妻を亡くした事による長期休暇に入ってしまっており不在。その代わりとして、西ロンドン署から派遣されたナッシュ巡査部長が警部代理に昇格して指揮を執る事になった。ただ、ナッシュはゲイである事を理由に、同僚や部下からの人望がなかった。一方、新聞社に、ある男から不審な電話が入った。その男は自分が婦警殺害の犯人である事を、ほのめかしていた。男は、電話対応する記者ダンロップに「7か8か選べ」と問いた。ダンロップが「8」と答えると、男は「警官をあと8人殺す」と言って電話を切った。間もなくして、パトカーで警ら中の警官が射殺された。

あくまでも個人的な見解だが、私は、ジェイソン・ステイサムは往年のアクションスターのような雰囲気を持った俳優だと感じている。マッチョな肉体美や高度なアクションをこなす身体能力は現代のアクション俳優さながらなのだが、人間味のある男気を感じさせる点や職人肌な役柄が似合う点は、スティーブ・マックイーン辺りの雰囲気を継承しているように感じる。

そう感じてしまう私なので、本作の作品タイトルを見て真っ先に思い浮かんだのが、字面がそっくりなマックイーン主演の「ブリット」だった。だが本作は、往年の作品に変わりないのだが、「ブリット」と言うよりも同時代の同じく刑事映画の雄「ダーティハリー」を彷佛とさせるような作品である。

「ダーティハリー」とダブるような作風は、時代錯誤に感じるのかも知れない。私も少なからず、そう感じる節はある。ただ、その時代錯誤を楽しめる作品だと言えるだろう。作品内容を考えれば不適切な表現かも知れないが、古き良き時代を感じさせる作品である。

そういった事を踏まえて興味深いのは、ブラントが使用する車としてメルセデス・ベンツSECを登場させている点だ。SECは、ある意味1980年代のベンツを象徴するような高級クーペ。ただ現代では、あまり見かけない過去の車である。まずは、そんな車を引っ張り出す、意表を突いた車種選定のセンスが嬉しい。ただ、それ以上に、大した活躍をする訳ではないので控え目ではあるのだが、本作の在り方を主張しているように感じられるのが面白い。

ここまで本作をノスタルジーに絡ませて語ってしまったが、ノスタルジーに浸らなくても楽しめる作品であるだろう。別段、往年のスターに重ね合わせる事をしなくても、ステイサムが現代の輝けるスターなのは言うまでもない。そんな輝きを存分に堪能出来る仕組みの作品、言い換えれば、ステイサムの魅力が前面に押し出された作品になっていると言えるだろう。アンチヒーローを男臭く全うするステイサムの姿は、すこぶるカッコ良い。

そして、犯人役のアイダン・ギレンの素晴らしい演技にも注目したい。この手の作品が光るのは、感情を逆なでする魅力的な悪役がいるからこそ。そんな損な役回りの任務を誇らしく、且つ酔いしれるようにギレンは遂行している。ギレンのイカれたサイコキラー振りは本当に見事であり、本作の大きな見どころである。


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