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どんな女? あなたをそんなふうな石頭にしたのは 原作はアーネスト・ヘミングウェイの小説「持つと持たぬと」。 古今東西、ハードボイルド作品の需要がどれだけあるのか?、どれだけあったのか?私には分からない。ただ、少なくとも現在の日本ではエンターテインメントの主流ではないだろう。ハンフリー・ボガートが活躍した時代は、ジュリーの曲にもあるようにハードボイルドが輝く良い時代だったのだろうか? 舞台はフランス降伏直後の1940年夏のマルティニク島フォール・ド・フランス。自分の船で釣り客相手の商売をしているハリーは、滞在先のホテルの支配人フレンチーから船を出して欲しいと頼まれる。政治的な背景がある面倒な仕事だと感じたハリーは一旦は断る。しかし、料金を未払いの釣り客が殺されてしまった為、金を必要とするハリーは仕事を受ける事にする。 舞台となる時代といい、状況といい、かなりカサブランカに酷似した要素を持った作品である。そう考えると、本作はカサブランカのヒットを受けての作品、もっと意地悪く言えば、二匹目のドジョウを狙ったと勘ぐりたくなるような作品である。 作品が類似している点についての評価は、人それぞれに見解が異なるところであるだろう。ただ、仮に二匹目のドジョウを狙ったのだとしても、その試みは成功したのではないかと私は思う。 私はカサブランカをけなすつもりは毛頭ないし、カサブランカが本作よりも劣っているとも思わない。なので「同じ轍は踏まない」という表現は、この場合では不適切である。ただ、手本があるからこそ、改善とまでは言わないが、違った道が見えてくる場合もあるだろう。本作は、その手法が成果として表れた作品であるかのように感じるのである。 本作がカサブランカと大きく異なる点は、カサブランカにあったメロドラマ風味な甘さが随分と抑えられている点であろう。その事がハードボイルド色を強くしているように思う。主人公のハリーは迷わない。但し、ハリーの心の中に葛藤がない訳ではない。しかし、そんなそぶりは表立って出さない。だからこそ、男の哀愁が成立するのである。 そんなハリーは、ユニークな立場の人間だとも言えるだろう。冷淡な程に現実的でありながら、現実の社会から一線を画するような一匹狼な男。あらゆるしがらみを避けて生きる事は並み大抵な事ではない。極端にストイックで極端に強くなければ、その生き方は成し遂げられないであろう。 ただ、ハリーには肝心なところで他人に手を差し伸べる準備も出来ている。「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」とは本作のハリーではなくフィリップ・マーロウの言葉だが、ハリーもそういったタイプの人間であるだろう。 本作はハンフリー・ボガートの主演作の中で、いの一番に代表作として挙げられる作品ではないだろう。しかし、極めて王道を踏み締めたハードボイルド作品であり、粋な男っぷりが込められた作品、すなわちハンフリー・ボガートのイメージに相応しい作品ではないかと思う。 ハンフリー・ボガートの個性が遺憾なく発揮されている本作であるが、ヒロインを演じるローレン・バコールのクールビューティーな魅力が光り輝く作品でもある。彼女の凛とした佇まいと、そこから香り立つ色気は本作の作風、そしてハンフリー・ボガートにベストマッチ。余談だが、本作公開の翌年、彼女はハンフリー・ボガートと結婚している。 常にアルコールが体内を循環しているエディーを演じるウォルター・ブレナンの名演も見ものだ。 |
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