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余計な事をしてくれたな 原作は大藪春彦の小説。くたばれ悪党どもに続く探偵事務所23シリーズの第2弾。と言ってもシリーズは全2作なので本作で終いである。 前作と本作の大きな違いは、前作がカラー作品であったのに対し本作はモノクロ作品である事だ。スケールダウンとでも言うべきこの事態に、どういった事情で至ったのかは私には分からない。ただ、ネガティブな想像は禁じ得ない。だがしかし、内容自体は前作に比べて格段にスケールアップしているように私には感じる。 思いもよらずに殺人事件の現場に居合わせた探偵の田島。田島は犯人の顔を見ていない。だが、犯人の一味は気掛かりで、田島の身辺に探りを入れる。田島自身も辺りに漂う不穏な空気を察知していた。そんな時、ある銃砲店の店主から新規に開業したライバル店「宮城(ミヤグスク)銃砲店」の違法営業の証拠を掴んで欲しいとの仕事の依頼が田島の元に入る。時を同じくして田島は、警視庁捜査捜査一課の熊谷課長より、同じく「宮城(ミヤグスク)銃砲店」の背後関係を調べるようにと捜査協力を求められる。 冒頭にジェームズ・ボンドに扮したショーン・コネリーの写真が登場する。確認してみると映画007シリーズがスタートしたのは1962年、日本での公開は本作と同じ1963年である。 本作の製作時点で、007シリーズが長きに渡ってヒットを続ける事を予見していたとまでは思わない。しかし、アクションを売り物にしていた日活が、とりわけ、奇しくも潜入捜査を行う、言わばスパイを主人公とした本作が、新登場したスパイアクション作品にシンパシーを感じているようには受け取れる。そういった意味では、取り立てて重要視するシーンではないのだが、中々興味深いシーンではないかと思う。 但し本作は(パロディーのように用いたシーンもあるのだが)007に感化されて出来上がった作品とは違う。スパイアクションを描きつつも本作で重きを置いているのは人間ドラマである。 本作は少し複雑な、何層かに積み重ねた構造でストーリーが構成されている。そのストーリー自体、優れた出来なのだが、ストーリーを盛り上げるムードもこれまた良く、魅力ある作品世界を作り出している。前作はコメディーが基盤の作風であったが、本作のコメディーは潤滑油の役割に留まっている。それによってハードボイルド色が強くなり、粋でニヒルな男らしさが鮮明になったと言えるだろう。 本作のテーマの中心に掲げられているのは、男の友情である。それは昔ながらの任侠道に準じているように感じる。そんな友情のカタチを暑苦しく描かないのが本作の秀でたところ 。立場の違う者同士の微妙な関係の上に成り立つ固い絆は、男女に置き換えれば切ないラブストーリーであるかのようである。この演出は実に見事で、正攻法でないが為に哀愁が生み出され、より一層に深みが感じられる。 前作同様、宍戸錠が主人公の田島を軽妙な味で好演している。だが、もうひとりの主役とでも言うべきミヤグスクを演じる葉山良二も負けてはいない。宍戸錠の田島とは逆に葉山良二はミヤグスクを実直に演じる。種類が異なる二人の男のダンディズム。この対比が物語を豊かにしている。 そんな男たちの物語には、女性キャストが入り込む隙が中々ないのだが、星ナオミの演技は印象に残った。実は彼女、前作では違う役柄で出演している。シリーズ作品、しかも2作しかないシリーズ作品で、それぞれで違う役柄で出演しているのは、本来ならば許す事の出来ない悪質極まりない反則技であるのだが、彼女の活躍に免じて不問にしたいと思う。 彼女が本作で演じるのは前作とは180度違う悪女。前作の明るい役柄もチャーミングで良かったのだが、本作で魅せるボンドガールのような危険な色香も魅力的だ。 本作は中々の秀作ではないかと思う。なのでカラー作品として製作されなかったのは非常に残念である。だが、もしかするとモノクロだからこそ、この境地に達する事が出来たのではないかとも感じる。 |
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