自分勝手な映画批評
翼よ!あれが巴里の灯だ 翼よ!あれが巴里の灯だ
1957 アメリカ 138分
監督/ビリー・ワイルダー
出演/ジェームズ・ステュアート バーレット・ロビンソン
雨が降りしきる深夜のニューヨーク。ルーズベルト飛行場近くのガーデン・シティー・ホテルのロビーでは大勢の記者が作業に勤しんでいた。その上の2階ではチャールズ・リンドバーグ(ジェームズ・ステュアート)が寝つけない時間を過ごしていた。

歴史的大偉業の記録

チャールズ・リンドバーグが1927年に達成した、ニューヨーク〜パリ間の大西洋単独無着陸飛行の様子を描いた作品。原作は1954年にピューリッツァー賞を受賞したリンドバーグの著作。

現在の我々の恵まれた環境は、偉大なる先人たちの血と汗、そして勇気から成り立っている。本作を観ていると、その事をまじまじと実感させられるし、同時に、破天荒な実話の躍動感は、大変見応えのある冒険物語としてのエンターテインメント性も生み出していると言えるだろう。

本作の原動力になっているのは、主人公リンドバーグのバイタリティーである。まず目標ありき、言い換えれば結果ありきなのだろう。目標、あるいは結果を定めて、どうすればそこに到達出来るのか? その逆算がリンドバーグにはしっかりと出来ている。逆算といっても生半可なものではない。その過程でリンドバーグは、いかなる苦労も惜しまない。目的がハッキリしているから、苦労にすらならないのだろう。このような姿勢であるからこそ、偉業を成し遂げる事が出来るのだろう。

そして、その姿は、高揚感溢れる冒険活劇として映し出される。実話をベースとしている強みはあるだろうが、最初から最後までドキドキ・ハラハラさせられる展開と辿り着いた感動は、効果的にに過去の出来事を挿入させるなどした優れた演出の手腕に因るところも大きいと言えるだろう。

そして忘れてならないのが映像の妙である。飛行シーンが必須の本作。製作された年代を考えると、まるで切り貼りしたかのような不自然な合成が行なわれている作品が多い中、実に見事な映像処理が施されている。この事で、素晴らしい物語に水をささずに、自然と作品にのめり込ませてくれるのは有り難いし、同時に、その技術力の高さに感服させられる。

本作と性質が同じである、小型ヨットで西宮〜サンフランシスコ間の単独太平洋横断を成功させた堀江謙一の姿が描かれている太平洋ひとりぼっちと見比べるのも面白いだろう。


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