自分勝手な映画批評
続・黄金の七人 レインボー作戦 続・黄金の七人 レインボー作戦
1966 イタリア 101分
監督/マルコ・ヴィカリオ
出演/フィリップ・ルロワ ロッサナ・ポデスタ
女装をして営業中の銀行に潜入する教授(フィリップ・ルロワ)。教授は離れた場所にある指令室にいるジョルジャ(ロッサナ・ポデスタ)の指示により、銀行内に発信機を設置した。

君は恋と仕事を混同している

タイトルどおり黄金の七人の続編。しかし様相は少々異なっている。前作よりもパワーアップ、あるいは変な言い方だが、良い意味で前作よりもエスカレートしている作品だと言えるだろう。

いつものように銀行強盗に勤しむ教授率いる強盗団。強盗は難なく成功するのだが、実行部隊は何者かによって拉致されてしまう。何者かたちはボスである教授とコンタクトを取ろうとするのだが、捕まった実行部隊たちは「教授など知らない」と白を切る。そこへ教授が相棒の美女ジョルジャを連れて自ら現れた。教授は何食わぬ顔で優位に交渉を進め、自らの多大な要求を飲ませ、彼らの要求する任務、ある国の指導者を誘拐する任務を請け負う事となる。

本作には東西冷戦の緊迫した時代が背景にある。舞台となる架空の某国は明らかに実在する国を意識し、その指導者も実在する人物をモデルとしているだろう。そう考えると、辛口の洒落を効かせて当時の国際情勢を皮肉り、コメディーに仕上げた作品だと言えるだろう。

一方で前作に比べてB級色が強くなったと感じさせる作品でもあるだろう。それは、前作の銀行強盗も決して現実的だとは言えないが、それに輪を掛けて非現実的な設定、いち独立国の指導者を誘拐する作戦が原因ではないかと思う。しかも実在ではなく架空の国家である事はB級作品にありがちな、ある種のパラレルワールド感を引き起こし、さらには007、あるいはサンダーバード顔負けの秘密兵器が多数登場する点もB級色に拍車を掛けている。

但し、このB級色は必ずしも安っぽくない。と言うのも、将軍を誘拐する作戦を順序だてて丹念に描いているからである。確かに誘拐も秘密兵器も荒唐無稽ではあるだろう。だが、そんな中でもリアリティーの追求に重きは置いているのである。このスピリッツは前作から受け継いでいる。

そんな本作は、とてもユニークな感慨を呼び起こす作品なのではないかと思う。決して大人っぽい作品ではない。だからといって幼稚で子供っぽい作品でもない。何とも言えない微妙なバランス感覚で保たれた作品ではないかと思う。

そこで改めて着目したいのはルパン三世との関係性である。本シリーズはルパン三世のルーツだと言われている。その真偽は私には定かではないのだが、もし事実だとするならば、前作以上に本作の影響が大きいのではないかと感じるのである。

ルパン三世は子供向けのアニメーションではなく、もっと高い年齢層をターゲットにした作品である。少なくとも当初のコンセプトはそうだった。しかし、結果的には絶対的な大人向けの作品には成り得なかった。正確には、大人向けの作品にしなかったのである。それは当初のコンセプトが世間に受け入れられずに視聴率が取れず、路線変更した為である。

受け入れられなかった理由は、まだ当時はアニメーションが子供の娯楽だという概念が広く一般的にあったからであろう。確かに当時は、ほぼ全般的にアニメーションは子供向けに製作されていたと思う。ただ、それは当然であるとも言えるだろう。実写ではない、すべてが想像の産物であるアニメーションは、どうしても夢物語、おとぎ話というような感覚が付いて回る特性があるのだと思う。

その辺りにルパン三世は切り込んだ。勝手な想像でまかなえてしまう描写にリアルな設定を施したのである。ただの車など現実には存在しない。だから登場する車の車種を特定した。他の設定に関しても、出来る限りリアリティーを追求している。そして肝心のストーリー自体も、どんな子供でも容易く理解出来るような明快な筋書きではなく、大人でも場合によっては考えてしまうようなアンニュイでグレーな雰囲気を持ち込んだ。

しかし、アニメーションとしては当時では斬新であったコンセプトは受け入れられずに路線変更を余儀無くされた。但し、基本的に変更したのは、やや解釈の難しいストーリーを子供でも容易に理解出来るようにした点。設定のリアリズムは路線変更以降も引き継がれた。

そこで本作である。当時の世の中に対する風刺はあるものの、朗らかで、時として馬鹿げているようにも感じるコメディータッチな作風は子供が喜びそうな作風である。ただ、その中でも大人が感心出来るようなリアリティーは重視している。

くり返しになるが、ルパン三世が本作を手本にしているのかは知らない。だが、路線変更後のルパン三世が本作の作品世界を忠実に再現したのではないかと思える程、実に良く似ているように思う。暴力や性的描写もあるのだが、過度ではないところも同じだと言えるだろう。ルパン三世が本作を手本にしているのならば、それは大成功だと言えるだろう。

長々と憶測も含んだ勝手な持論を展開させてしまったが、もっとも本作は、ルパン三世を持ち出さなくても存分に楽しめる作品だと思う。しっかりと完成されたユニークで独特な作品世界は、病みつきになる人もいるのではないかと思う。

前作とは違った類いの小悪魔っぷりを披露し、艶やかに色香を振りまくロッサナ・ポデスタは本作でも魅力的だ。


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