自分勝手な映画批評
黄金の七人 黄金の七人
1965 イタリア 95分
監督/マルコ・ヴィカリオ
出演/フィリップ・ルロワ ロッサナ・ポデスタ
黄色い車の列がジュネーブの街を走り抜ける。車列は銀行の向いで止まり、オレンジ色した作業服を来た工事作業員が降りてきて、作業を開始する。その様子を教授(フィリップ・ルロワ)とジョルジャ(ロッサナ・ポデスタ)は、黒塗りのロールスロイスの後部座席から見守っていた。

すべてお見通しね

銀行強盗を企てた一味の顛末を描いた作品。

本作はルパン三世との類似性、あるいはルーツのひとつではないかと指摘される作品である。その意味は本作を観れば容易く理解出来るだろう。

もっとも、強烈な個性を放つルパン三世というキャラクター自体は本作には見当たらない。だが、ロッサナ・ポデスタ演じるヒロインは峰不二子と通じるところが多分にあるし、何よりスリルとユーモア、緊張と緩和が絶妙に絡み合ったムードは初期のルパン作品と大変良く似ている。

スイス・ジュネーブの銀行の金庫に保管されている7トンの金塊を狙う強盗団。ボスは教授と呼ばれる男。教授は離れて指示を出す、言わば監督役であり、実行犯は6人の男。加えて美女1人が彼らの作業をアシストする。彼らは工事の業者を装い、銀行から道を1本挟んだ場所に穴を掘り地下の共同溝から銀行の金庫に侵入する。

本作の特徴のひとつとして挙げられるのは、犯行の様子を大幅に時間を割いて実に丹念で丁寧に描いている点であろう。当時のハイテク技術が滑稽に感じる面もあるのだが、それでも事細かに描かれた手口は優れた頭脳を用いて周到に練られた作戦であると実感させられる。

しかし万事が上手く行く訳ではなく、思いもよらぬ事態が作戦を妨げる。完璧な作戦だからこそ、僅かな狂いが彼らを右往左往とさせる。その危機を乗り切る為には、作戦にはない臨機応変な対応力が必要となる。

この長時間を費やした犯行の様子を描いたシークエンスには、緻密に計算されたインテリジェンスと、さらにその上の状況を見越した高次元のスリルが詰まっており、盗みを主体としたエンターテインメントの醍醐味を存分に堪能する事が出来る。

但し、物語はそこで終わらない。それが本作の秀でた点であるとも言えるだろう。欲深き犯罪者たちが繰り広げる人間ドラマは盗みとは違った座標軸で犯罪作品の真髄を描く。ただ、暴力的な描写がないので、卑しき策士の攻防ではあるのだがスマートな印象を与えるのは上手い処理の仕方であるだろう。

本作の象徴とも言えるキャラクターはロッサナ・ポデスタが演じるヒロインのジョルジャ。彼女は前述したとおり峰不二子張りにやってくれる。また、彼女の美貌もさることながら、ストーリーとは一切関係なく何度もチェンジする彼女のモードなスタイリングも本作の見どころだ。

そして本作に欠かせないのが、アルマンド・トロヴァヨーリの音楽。スキャットと口笛を多用したゴージャスで軽やかな楽曲は秀逸。音楽だけを切り取っても本作の価値は見出せるのではないかと思う。


>>HOME
>>閉じる









★前田有一の超映画批評★

おすすめ映画情報-シネマメモ