自分勝手な映画批評
それでも恋するバルセロナ それでも恋するバルセロナ
2009 アメリカ/スペイン 96分
監督/ウディ・アレン
出演/レベッカ・ホール ハビエル・バルデム スカーレット・ヨハンソン
夏休みを利用して、スペイン・バルセロナに訪れたヴィッキー(レベッカ・ホール)とクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)の二人。好みも意見も同じ学生時代からの親友同士なのだが、愛については意見が合わなかった。

バルセロナの魔法にかかったアメリカ人

スペインのバルセロナを舞台に、アメリカ人旅行者と現地のスペイン人とが織り成す恋愛群像劇。

本作は、まがうことなくラブストーリーだ。ラブストーリー以外の何ものでもない。しかし、のめり込み過ぎてしまったラブストーリーは、世間一般で認識されているラブストーリーの鋳型には収まりきらず、ステレオタイプな原形を留めなくなる。外国での恋物語という設定は同じでも、王道ローマの休日とは、かなり毛色が異なる作品に仕上がっている。

本作で描かれているバルセロナは自由な恋愛の桃源郷だ。もちろんバルセロナに罪はない。色欲の都に仕立て上げたのは、ハビエル・バルデム演じる画家のフアン・アントニオのフェロモンたっぷりの魅力の所為。

そんな経験した事のない異国の誘惑に、遥々バルセロナに訪れたアメリカ人女性2人は、1人は進んで、1人は抑えきれずにまんまと陥って行く。さらに、そこに強烈な個性が加わって、収拾が難しくなって行く。

面白いのは、それぞれが自分に無いモノへの憧れ、そして自分に無いモノを補う為に恋愛に臨んでいる事だ。だからといって、決して打算的には思えない。むしろ本能に委ねているように感じる。しかし、根本的に自分本位の思惑ばかりでは、なかなか上手く事は進まないのだろう。

人間の心情の奥底を露にする描き方は、いかにもウディ・アレンらしい。極端な場面転換は作品に軽妙なテンポをもたらす。それはバックに流れるギターの小気味良い音色と呼応している。しかし、その曲調はどことなくメランコリック。それも作風に合っていると言えるだろう。

本作で情熱のスペイン女性を演じたペネロペ・クルスは第81回アカデミー賞助演女優賞を受賞している。


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