自分勝手な映画批評
レイチェルの結婚 レイチェルの結婚
2008 アメリカ 114分
監督/ジョナサン・デミ
出演/アン・ハサウェイ ローズマリー・デウィット
薬物の治療施設に入っていたキム(アン・ハサウェイ)は父(ビル・アーウィン)と継母(アンナ・ディーヴァー・スミス)が迎えが来て退院した。実家では姉のレイチェル(ローズマリー・デウィット)の結婚式の準備が進められていた。

「スタート」と「リスタート」

薬物依存の女性を中心に、彼女の姉の結婚式を舞台にした家族の様子を描いた作品。

ドキュメンタリータッチとまでは言わないものの、まるでホームビデオを回しているようなナチュラルな演出は本作の特徴であろう。飛び飛びに感じるシーン・カットのつなぎ合わせは作品にテンポをもたらし、また、ふんだんに盛り込まれた音楽も効果的である。

厄介者で腫れ物の次女キムが家族の元に戻って来て、かき乱す。しかも人生、あるいは家族の一大事である結婚式の時期に。この設定が、絶妙である。そもそも、マリッジブルーなんて心境があるように、この時期の心模様は、ある意味ナーバスであり、刺々しくなってしまうのも仕方がない事なのかも知れない。

その心境は花嫁だけの特権ではなく、周りの人間にとっても同じなのかも知れない。新しい門出に喜びと高揚があるにせよ、一種独特なこの時期は不安定であっても何らおかしくない。そこにキムは容赦なく爆弾をまき散らす。

それは辛く苦しいキムのメッセージであるのだが、何もこんな時にもめ事を起こさなくても…とハラハラしてしまう。だが逆に、他者を思う余裕のないこの時だからこそ良かったのではないか?とも感じる。オブラートに包まない意見の応酬は、過激で見ていて嫌になる面もあるのだが、ナチュラル思考の本作の飾らない根源であると思う。

はすっぱな主人公をアン・ハサウェイが体当たりで挑む。但し、彼女が潜在的に持つフェミニンな魅力は、主人公のキャラクターを中和し、見るからに嫌な女性にならないのは観ている側にとって良い効果なのではないかと思う。ギスギスとした人間関係が描かれる中、父親役のビル・アーウィンの、いかにも女性家族の中の唯一の男性、あるいは娘を持つ父親といったソフトなキャラクターは好印象だ。

本作と共通点があるイン・アメリカ/三つの小さな願いと見比べるのも面白いと思う。


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