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私たちが描いていた夢、輝きは忘れない 原作は矢沢あいの漫画。NANAの続編。 本作に触れる上で避けては通れないのは、主要キャスト数名が前作から変更されている点だ。どんな理由があるのかは知らないが、作品の性質を踏まえた前作からの関係性を考えれば、あってはならない事態であり、ハッキリ言って続編を楽しみにしていた人たち、あるいは作品のファンに対する背信以外の何ものでもないだろう。 キャストの変更による影響は、観る側のみならず製作する側にも当然ながら現れている。特に感じたのは新たに本作に加わった市川由衣。皮肉にも本作では彼女が演じた奈々の存在感が前作以上に大きくなっているのだが、その演技からは明らかに前任者の影をなぞろうとする意識が伺える。 但し、そんな状況でも彼女は健闘していると思う。そんな気の毒に思える程の彼女の頑張りには、およそ映画には相応しくないのだが、敢闘賞でも授与して労をねぎらいたい気持ちにさえ駆られる。 ただ、作品がリリースされてしまった以上、ネガティブな捉え方をするばかりでは観る者にとっては損なのだと思う。直系の続編に臨むには本来ならあるまじき心持ちではあるが、前作からある程度の気持ちの切り替えをもって臨めば、本作の魅力は見えてくるのだと思う。 トラネスのタクミのファンであった奈々は、ナナの粋な計らいによってタクミと知り合い恋仲になる。最初はスターとの恋に夢心地であり、同時に割り切った付き合い方を納得していた奈々だったが、いつまで経っても気持ちが満たされない関係に不安を募らせていた。また、レンと縒りが戻り、バンドがレコード会社にスカウトされて多忙なナナとはすれ違う日々が多く、奈々の寂しさは増す一方であった。 本作は奈々が実質的な主人公だと言っても過言ではないのかも知れない。本作で描かれるドラマを導いたのは奈々。奈々が色付けした物語は悲しく染まり前作とは違う景色を見せる。前作が上へ上へと向かって行く気風を感じさせたのに対し、まるでその反動であるかのように本作は急激に下へ下へと落ちて行く。 奈々は言う「夢が叶う事と幸せになる事は、どうして別物なんだろう」。かなり強烈な言葉だと思う。しかも、この若さでこの心境に辿り着くのも興味深い。それだけ自分の人生に逃げずに真正面からぶつかっている証拠なのだろう。 本作には不器用な若者たちの、もがき苦しむ姿が痛ましく描かれている。必ずしもハッピーだと言える内容ではないのかも知れない。だが、それこそが続編をこしらえた意義であり、本作の価値であるだろう。 |
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