自分勝手な映画批評
クリムゾン・リバー クリムゾン・リバー
2000 フランス 106分
監督/マチュー・カソヴィッツ
出演/ジャン・レノ ヴァンサン・カッセル ナディア・ファレス
1人の男が憲兵隊員たちが検証に勤しむ山林の殺人現場に到着した。その男は憲兵隊の要請により派遣されたパリ警察のニーマンス警視(ジャン・レノ)だった。

戻って来たのです、始末をつけるために

奇怪な連続殺人事件の顛末を描いたミステリー。原作はジャン・クリストフ・グランジェの小説。監督はアメリ等に出演し、俳優としてのキャリアもあるマチュー・カソヴィッツ。

作品タイトルは直訳すると深紅色の川(元々の原題であるフランス語タイトルも同様)。それに思しき河川の描写は作中には出てこないので、比喩を用いた作品タイトルであるだろう。それは、血なまぐさい事件の事を指すと考えられるが、同時に本作のポイントとなる血縁の意味も含んでいると思われる。





アルプス山脈の麓にあるフランスのゲルノンで殺害された遺体が発見された。遺体の身元は地元のゲルノン大学の図書館司書のレミー・ケロウ。遺体は、まるで子宮内の胎児の姿勢を保たせるかのように縛られ、無数の裂傷と多くの骨折があり、両手を切断され、両目をくり抜かれた状態で崖の途中、地上より50メートルの場所に引っ掛かっているところを山に入っていた女に発見された。事件を担当する憲兵隊はこのようなケースに不馴れな為、パリ警察に協力を要請。パリ警察からニーマンス警視が派遣され、捜査を進める事となった。一方、同じ頃、ゲルノンから200キロ離れたサルザックで墓荒らしと小学校での強盗事件が発生し、地元警察のマックス警部補が捜査を始めた。





中盤までは2つの物語が平行して展開して行く。こんな事を言ったらいけないのだが、映画なので何処かで2つが繋がる事は予め予測出来る。ただ、そこまでの展開が秀逸なので裏側の目論見が嫌らしく感じる事はないだろう。

本作で強く感じる事は、ハリウッド的なエンターテインメント性を有している作品だという事だ。勝手な思い込みだが、フランス映画には独善的なイメージが私にはある。しかし本作は、そのイメージを引きずる事はない。ストーリーの誘導力には大局的な視野、つまり行き届いたエンターテインメント性が備わっており、実に見易い仕上がりになっている。不気味な題材をスピード感を用いて料理しスリルを助長させ、更にはバランス良く、且つコンパクトにまとめ上げた手腕は見事である。

また、ジャン・レノとヴァンサン・カッセルの演技も大きな見どころとなるだろう。両者がそれぞれ演じるのは基本的には似たタイプの無骨な刑事。そのようなキャラクターは決して真新しい訳ではないのだが、両者共に堂に入った演技で魅力を注入しており、ストーリーに一層の輝きを与えている。

人間の想像力は無限だ。それを元とする実行力も果てしないと言えるのかも知れない。進化を求める事は人類の財産だと言えるだろう。但し、進化には副作用がある事を忘れてはならない。どこかでリミッターを掛けなければ崩壊してしまう場合もあるだろう。進化の名の元に、すべてが許される訳ではない。


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