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非公認デビッド・ボウイ物語 グラムロックスターに魅せられた当時の青年が、青春を振り返るカタチで自身の青春と当時の喧騒を描いた作品。脚本も兼ねる監督トッド・ヘインズは余程ファンなのか、本作にはデビッド・ボウイに対する愛憎が顕著に感じられる。 グラムロックの派手なイメージをフィーチャーされる事の多いボウイだが、グラム時代のボウイはアルバムタイトルでもある「ジギー・スターダスト」という架空のロック・スターを演じていたに過ぎない。ただ、そのセンセーショナルな容姿と圧倒的なパフォーマンスは熱狂的なファンを呼び、一躍、時代の寵児へと踊り出す。しかし、自らライブ中に引退宣言し、「ジギー・スターダスト」というキャラクターに幕引きをする。 そもそもボウイは、一歩先行く先見性で常にカメレオンのように自らや作品を変化させてきたアーティストであり、時として難解でアーティスティックな姿勢や作品群が評価されてきた。「ジギー・スターダスト」後もアルバムごとに違うと言っても過言ではない程、異なるサウンドの作品を発表し、時には違うキャラクターを演じてきた。 しかし1983年、丁度、大島渚監督、坂本龍一、ビートたけし共演の映画「戦場のメリークリスマス」公開と同年に発表したアルバム「レッツ・ダンス」が物議を醸し出す。確か、このアルバムのキャッチコピーは「時代がボウイに追いついた」だったと思う。セールス的にはキャリア最大のヒットなのだが、ポップな内容のアルバムに今までのアーティスティックなボウイに熱狂したファンは失望した。「ボウイは単なるロックスターに成り下がった、ボウイは別人になった。」と。これが一般的に言われるボウイのキャリアに対する評価。一方、ボウイの盟友イギー・ポップは、パンクのゴッドファーザーと呼ばれる程アナーキーな姿勢を貫いている。 そんな予備知識があると、本作を一層楽しめると思う。私には、「ジギー・スターダスト」で一気に心を掴まれたボウイファンの気持ちを代弁している作品のように思えた。芸術や芸能、音楽に対する評価で絶対値はない。その評価は、人それぞれの好みや価値観に基づくからである。だから、ボウイに対する評価のように、ここまで一辺倒な評価は珍しいのではないかと思う。しかし裏返せば、それだけ人々はボウイに魅せられたということなのだと思う。 グラム世代ではない私は「ジギー・スターダスト」も「レッツ・ダンス」も楽しめる。 |
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