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生きるっつー事はさ、すっごく恥ずかしい事だ 原作は、さだまさしの小説。心に傷を負った若者が再生して行く姿を描いた作品。 本作は、尊くも日陰な職業である遺品整理業者にスポットライトが当たっている作品である。描かれている内容はさておき、その点においては「おくりびと」と似たような性質の作品だと言えるだろう。 永島は父親に付き添われてクーパーズという会社の前にやってきた。今日から永島はクーパーズで働く事になったのだ。但し、父親の付き添いはクーパーズの前まで。永島は1人でクーパーズの事務所へと入って行った。クーパーズは遺品整理を代行する会社。永島は入社早々、遺品整理の現場へと行く事になった。一緒に現場に行って仕事をするのは佐相という人当たりの良い壮年男性と、ゆきという永島と同世代の若い女性。永島は特に戸惑う事なく佐相とゆきに同行した。かといって、積極的に馴染もうとする訳ではなく、至って粛々と彼らに同行するだけだった。現場に到着し、ゆきと共に仕事道具をトラックから降ろす永島。指示に返事をしない永島に、ゆきは見兼ねて「返事した方がいいよ」と注意する。すると永島は、戸惑いながらも「ハイ」という言葉を絞り出すのだった。 本作は、2つのストーリーを作中で同時進行させている。1つは主人公の永島が遺品整理業者として働く現在のストーリー。もう1つは現在より3年前、永島の高校時代のストーリーである。 基本的には現代のストーリーが中心となって展開され、そこに過去のストーリーが所々に挿入されるスタイルであり、2つのストーリー共、それぞれに時系列を追って進行している。現代の永島は、明らかに心を病んでいる。その理由が過去のストーリーが進むに連れて、徐々に紐解かれるという仕組みだ。 その様子は実にサスペンスフルであり、ミステリーと呼んでも差し支えないだろう。ただ、本作は犯罪を究明するような話ではない。自身の心の闇に立ち向かい、自らの答えを導き出さなければならない極めて困難なミステリーなのである。 自分の内面を探るミステリーは非常に重くて息苦しい。登場人物に感情移入出来れば、更にその度合いは増す事だろう。だが、感情移入出来なくて、客観的にストーリーを覗くにしても有意義な作品ではないかと思う。本作は生と死を多角的な観点から描いている。この手の作品は絵空事に感じ、お涙ちょうだいが鼻につく場合もあると思うのだが、そうは本作がならないのは、現実に存在している遺品整理業者という設定を通じて描かれているからだろう。 本作から発せられたメッセージは難題なのかも知れない。嫌な過去を封印する事は、前へと進む常套手段だ。だが、当然だが問題の根源は解決されない。本作の若者2人の勇気に、心を強く打たれる。 その若者2人を演じる岡田将生と榮倉奈々が本当に素晴らしい。本作は脇に手足れた名バイプレーヤーたちを配置しているのだが、彼らが霞んでしまう程、この2人は強烈な輝きを発している。 岡田は持ち前の感性をフルに発揮し、全霊で永島の苦悩をカタチにする。その姿はジェームズ・ディーンを彷佛とさせる。この先、岡田がどのような俳優になるのか分からないが、少なくとも現時点では完成されている俳優だと実感させられる。 個人的に榮倉は、明るい役柄の方が似合うと思うのだが、本作のような影のある役柄の方が実力を感じられるのが面白い。台詞を、より意味あるものとする為の繊細な表情の演技は、何気なく見えつつも、並の俳優では太刀打ち出来ない妙技であると思う。 |
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★前田有一の超映画批評★ |
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