自分勝手な映画批評
女の都 女の都
1980 フランス/イタリア 139分
監督/フェデリコ・フェリーニ
出演/マルチェロ・マストロヤンニ アンナ・プルクナル エットレ・マンニ
列車内で寝ているスナポラツ(マルチェロ・マストロヤンニ)。目を覚ますと美しい女性(バーニス・ステガーズ)が目の前に座っていた。

いい年して、いつまでこんなことしてるんだ

ある男が次々と様々な騒動に巻き込まれて行く様子を描いた作品。

甘い生活」と「8 1/2」はフェデリコ・フェリーニ監督の代表作として広く知れ渡っている作品であるだろう。その両作で主演を務めたのがマルチェロ・マストロヤンニ。であるならば、フェリーニとマストロヤンニは名コンビであり、数多くの作品でコンビを組んでいるのかと思いきや、意外にもそうではなかった。

本作は「8 1/2」以来、17年振りにマストロヤンニがフェリーニ作品に出演した作品のようである。二人が名コンビであるのは確かなのだろうが、二人の間には随分と長い空白があった事実に少なからず驚いた。但し本作以降も、このコンビは組まれている。





列車内で美しい女性に一目惚れしたスナポラツは、その女性が途中下車したので一緒に列車を降りる事にした。森の中を進む彼女を追ってスナポラツが辿り着いたのは、多くの女性がごった返すホテル、ミラマーレだった。





本作の最大の特色は女性が圧倒的な存在感を示している事だろう。マーガレット・サッチャーが女性初のイギリス首相に就任し、国連で女子差別撤廃条約が採択されたのが本作公開前年の1979年。そういった時流が影響しているのかは分からないのだが、例え影響がなくても、今となっては当時の風潮を強く滲ませる作品になっていると言えるだろう。

ただ、どうであるにせよ、そもそも作品を通じて性に関して多くを語ってきたフェリーニであるので、時代に関係なく作られるべくして作られた作品ではないかと思う。作品のスタイルとしては「8 1/2」に似ていると思う。つまりフェリーニが劇中の主人公に自らを投影しているようにも思える作品、フェリーニの女性観を主人公に代弁させているようにも感じる作品なのである。

フェリーニらしい深みのある作風は本作でも健在。度が過ぎると思える程の猥褻な描写が存在するので、一見すると品性を疑いたくなるのだが、最後まで辿り着けば、あるいは見返してみれば物語に必要な大の男の赤裸々な告白だと納得出来るのではないかと思う。

結局、男とは、いつ何時でも女なしでは生きてはいけない。そんな男の叫びが本作から聞こえてくる。ただ、それは男の甘え以外の何ものでもなく、男は情けない生き物だと白状しているようなもの。つまり、男の白旗宣言である。だが、見方を変えれば究極のフェミニズムだとも言えるだろう。

幻想的で刺激的な描写が強烈なので、まどろっこしい技法ではあるのだが、フェリーニの、ひいてはイタリア男のフェミニズムが如実に表れた作品ではないかと思う。


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