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すっげーなーTOTO 新婚夫婦が地獄へと新婚旅行に行く話。原作は前田司郎の小説。前田は本作の脚本も手掛けている。 本作で、まずインパクトを感じるのは作品タイトルではないかと思う。まるで子供向けの絵本に用いられそうな、映画としては風変わりな作品タイトル。作品内容も作品タイトルからのイメージに違わずファンタジック、そして風変わりである。もしかすると万人受けする作品ではないのかも知れない。しかし無性に愛くるしく感じる作品であると私は思う。 4年の同棲期間を経て結婚した信義と咲。二人は新婚なのだが同棲していた年月が災いしてか、倦怠期を迎えたような有り様だった。ある日、咲はスーパーで炊飯ジャーを抱えた謎の男に出会す。信義と咲が引っ越して来た新居では、何故かある筈の炊飯ジャーがなくなっていた。その炊飯ジャーだと感じた咲は、とっさに謎の男を追い掛ける。しかし、屋上まで行くのだが謎の男を見失ってしまった。屋上からの帰り、階段の途中で咲は占いの店と占い師の女に遭遇する。占い師の女は咲に「炊飯ジャー見つかったの?」と問いかけ、「(炊飯ジャーは)地獄にある」と意味不明な言葉を放ち、地獄旅行のチラシを渡すのだった。 映画には荒唐無稽な作品が数多く存在するのは周知の事実。だが、その範疇さえも大きく逸脱しているような超荒唐無稽な物語が本作なのである。普通ならそんな物語、とてもじゃないが付いて行けやしない。ただ、優秀なギミックがふんだんに用意されているので、ついつい忘れてのめり込み、大いに楽しめる作品に仕上がっている。 私が感じる本作最大の特長は、セリフ・会話の素晴らしさである。それは主に主人公夫婦の間でのやり取りなのだが、とにかく話が広がる広がる。しかもリズミカル、且つコミカルなので大いに笑わされる。 発した言葉の真意ではない部分、時には言葉尻を捉えて脱線し、まるで無限大まで発展するのではないかと思えるくらいに会話を展開させる様相は秀逸であり、ちょっと他の作品では味わえないだろう。但し、会話が必ずしも弾んでいる訳ではない。この辺りに微妙な夫婦関係が上手く表現されていると思う。 また、キャスティングの素晴らしさも本作の見どころである。樹木希林と片桐はいりの占い師、及び旅行代理店のコンビは、もはや反則の域の最強コンビ。二人の演技の応酬、いや、二人が同時に映し出されるだけで笑いは必至である。荒川良々も持ち味を遺憾なく発揮して本作に多大なる貢献をしている。 こんな風に彼らを称したらあまりにも失礼なのだが、あえて彼らを土台だと称すれば、この上なく贅沢な土台だと言えるだろう。言い換えれば、上に乗せるものは贅沢な土台に見合ったものでなければならない事になる。その点も本作は申し分ないだろう。 竹野内豊は主役級の二枚目俳優の中では珍しく、演技の幅が大きい俳優だと思う。最も得意なのはナイーブな演技だとは思うが、重厚な役でも軽薄な役でも難なくこなす器用さ、あるいは演技力が竹野内にはある。しかも、どれも二枚目を崩さないのがすごいところ。コメディータッチの本作で必ずしもそれに準じている演技をしている訳ではないのだが、それでもおもしろおかしく見せられるのは俳優としての懐の深さの証しであるだろう。 相手役の水川あさみも良い。独特な強い個性と美しい透明感が共存する魅力は本作でも健在。実質、物語を牽引するのは水川だと言えるだろう。その重責も見事に果たしている。作品、役柄を問わずに実力を発揮し、どんな役割でも担えるオールラウンダーな仕事振りには感服である。 そんな手足れた大人たちの中でもキラリと光る橋本愛の存在も見逃せない。告白での名演が印象に残る橋本だが、本作でも立派に役柄に没頭し、幼気だが深みのある演技を披露している。 超荒唐無稽な設定を超自然体で描いた本作。この両極端の融合が独自の笑いと温かみを生み出している。設定が設定なので異色な奇物であるのは間違いないだろうが、一旦受け止めてしまえば虜になってしまうような魔力が本作には備わっているように思う。 |
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★前田有一の超映画批評★ |
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