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このドアを破ったら、後には戻れないぞ ギャングのボス、アル・カポネと捕まえようとするエリオット・ネス率いる捜査官たちの奮闘を描いた作品。 本作は多分に脚色が施されているようだが、一応、実話を元にした作品である。また、日本でも人気を博した1950〜60年代に製作されたアメリカのテレビドラマのリメイクでもある。但し、リメイク作品としての意味と価値は、まだドラマの記憶が残っていた公開当時には大いにあったであろうが、それから随分と時間が経ってしまった現在では薄れてしまっているように思う。もっとも、そんな事情を知らなくても惹き付けられる要素は存分に詰まっている作品であると思う。 1930年、ギャングが抗争を繰り広げていた禁酒法の時代のシカゴで、シカゴ市当局の要請を受けた財務省の特別捜査官のエリオット・ネスは、警察と協力して密売酒とそれにからむ暴力事件の対処に乗り出す事になった。しかしギャングと広く通じている警察は非協力的で取り締まりは上手く進まない。意気消沈のネスであったが、実直で熟練した仕事をする誇り高き老警官マローンと出会い、信頼出来る精鋭を集めチームを編成しようと決意する。 本作のひとつのポイントとなるのは、本作の舞台となる時代で施行されていた、アルコールの製造、販売の禁止、すなわちアルコールを飲む事を禁止する禁酒法である。少なくとも現代の日本では考えられない禁酒法下を舞台にした本作は、現実ではあるのだが、ある意味我々の日常からは掛け離れた不思議な空間で展開されていると言えるだろう。 禁酒法が悪法とまでは言うつもりはないが、飲酒が許されている我々にとって、禁酒法がもたらす苦痛とジレンマは容易に想像出来るだろう。但し、本作は禁酒法に関して深く掘り下げ、是非を問うた作品ではない。本作で浮き彫りになるのは、その時代に生き、信念を固持する男たちの心意気である。 もうひとつポイントとなるのは警察の腐敗である。本来なら悪の組織とそれを取り締まる正義の警察という構図は当然であるべきなのだが、悪と警察が癒着した世の中であるなら成立しなくなる。そして、そんな中でも正義を貫こうとする者は、余計な敵を抱えた孤独な戦いを強いられる事となる。この様相はアメリカ映画に多く見受けられ、例えば同年代に製作されたイヤー・オブ・ザ・ドラゴンも同様である。それだけ、この問題は深刻であり、根強くはびこっている事を物語っているように思う。 主人公のエリオット・ネスを演じたケヴィン・コスナーにとっては、本作は出世作であり代表作のひとつとして挙げられる作品である。年齢を考えると、本作でのブレイクは少し遅咲きとも思えるだが、その事が却って良い効果をもたらしているように思う。すでに備わっているニューカマーとは思えない安定感はナイスミドルな風格を醸し出し、魅力に満ち溢れており、まさに満を持しての登場だと言わんばかりである。実際、本作から後の数年は彼にとって黄金期であり、作品にも恵まれ、ハリウッドの顔として活躍していた。 職人気質で頑固だが温かみのある老警官のマローンを演じたショーン・コネリーも素晴らしい。本作での演技面でのハイライトは彼から生み出されていると言えるのではないかと思う。彼は本作の演技で第60回アカデミー賞助演男優賞している。 また、実はケヴィン・コスナーと年齢はそれ程変わらないが、新米刑事らしい荒々しい若さを表現するアンディ・ガルシア、本作で唯一のユーモアを感じさせるビリー・ドラゴも良く、豊富なキャラクターが揃ったチームは実に魅力的である。 アル・カポネを演じるのはロバート・デ・ニーロ。彼は役作りとして頭髪を抜いて本作に挑んでいる。彼の代名詞であるデニーロ・アプローチは本作でも確認出来る。 1930年代のムードを再現し、且つ、より一層魅力的に再構築した作品世界は上級のセンスを感じさせる。要所で絶妙なサスペンスを紡ぎ出す演出も見事。作品を盛り上げるエンニオ・モリコーネの音楽も素晴らしく、勇敢な男たちのドラマを完璧なまでにサポートしている。 |
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