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心の奥底にしまってあった履歴書 原作は西原理恵子の漫画。スランプに陥った女流漫画家が、自らの生い立ちを振り返る作品。 成長とは変化であるとも言えるだろう。一方、友情とは不変である事が望ましいとされる。成長と友情。ひねくれた捉え方かも知れないが、片や変化を善しとし、片や善しとしない、この2つが本作の大きなテーマとなる。 もしかすると、多くの人が通ってきた道なのかも知れない。だが本作では、舞台となる、ある種、閉鎖的で独特な環境が逃げ場を失わせ、2つの関係を、より一層強調させている。幼い頃に結んだ友情は、永久に不変なのだろうか? 一般的には恵まれているとは言えない境遇にいる3人の少女が出会い、友情が芽生える。少女たちの友情の源は同じような境遇に対する共感である。その共感は少女たちにとって、唯一の拠り所として、幼き心の支えになっていたと言えるだろうし、共感する気持ち自体は、いつまでも持ち続けるのかも知れない。 しかし、それ以外の事は成長に伴い大きく変化していく。世間が広がり、環境が変わり、自我に目覚める。それらの要素が、幼い時に誓った友情を翻弄し始める。 成長するに連れ、自分が徐々に出来上がってくる。そうなれば、意見の相違が生まれ、生き方の違いも感じる事となるだろう。だからといって自分の成長を止める訳にはいかない。成長という変化の中で、変わらぬ友情を保ち続けるのは、中々難しい事なのかも知れない。 だが、忘れてはならない大事な事は、友情自体も成長するという事だ。友情は不変ではない。壊れる事もあれば、成長する事もある。最初は各自の事情を持ち寄って芽生えた友情も、月日を重ね、大切に育くむ事により、新しい段階、すなわち、さらに強く固い友情へと発展するだろう。 本作は、幼少期、思春期、現在と3つの時代が描かれ、その成長に合わせて演じる役者が異なる。深津絵里が演じる主人公である現在の菜都美は、過去を振り返る役割。もちろん、その役割は重要であり、物語の核心ではあるのだが、物語のメインとなるのは、幼少期、思春期であり、進行させていくのは、演じる若い女優たちである。 選ばれし若き才能の輝きを感じる面は多分にある。しかし、まだまだ荒削りな若いキャストに本作の屋台骨を任せたのは、作品の完成度の点で影響を及ぼしたであろう。だが、それこそが本作の魅力である。まだ型に嵌っていない、未完な瑞々しさは、過酷な物語を生々しく彩り、本作にはなくてはならない力強いパワーを存分に表している。 私が本作を観て思い浮かべたのはスタンド・バイ・ミーだった。ただ、長いスパンを描いている本作の方が、より人生というものを感じられるのではないかと思う。そして昔を懐かしむような、良き思い出のフィルターが掛かっていないのも異なる点であろう。 平仮名を用いた柔らかく優しい作品タイトルに騙されてしまうが、物語は随分と厳しく難しい。封印していた、清算しきれていない過去に向き合うのは、勇気がいる事なのかも知れない。しかし、逃げずに立ち向かう事は必要なのかも知れない。 |
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