自分勝手な映画批評
突入せよ!あさま山荘事件 突入せよ!あさま山荘事件
2002 日本 130分
監督/原田眞人
出演/役所広司 宇崎竜童 天海祐希
1972年2月19日、長野県南軽井沢。長野県警は、さつき山荘を検索中に潜んでいた連合赤軍と遭遇する。

ヘラクレスの選択

1972年、長野県軽井沢町で起きた「あさま山荘事件」を題材にした作品。

連合赤軍のメンバー5人が、人質をとって立てこもった「あさま山荘事件」は、日本の現代史に残る、大きな衝撃をもたらした事件である。但し、本作は事件までの経緯や本質を描くのではなく、あくまでも事件に対応する警察の姿を描いており、この描き方・作品に対する姿勢は、原田眞人監督が後年に製作した日航機墜落事故を題材にしたクライマーズ・ハイと共通する。

本作での大事件に対峙する警察の姿は、正直、これで大丈夫なのだろうか?と不安にさえ思えてしまう程の描かれ方をしている。内部の権力争い、のどかにも感じてしまう警察官の意識。ただ、警察官を、ひとつの職業として捕える意味では、良いか悪いかは別にして、人間味がありリアルに感じてしまうだろう。

当たり前だが、警察官も人間だ。しかし、彼らは普通のサラリーマンではない。命のやり取りをも辞さない危険な場所を職場とする警察官である。そんな彼らであっても、極限の状況を目の当たりにして、人間としての感情が露になる。

作中、「1人の人質救うのに、帰ってこない警察官が何人出るのかね?」という台詞がある。これが実際の発言かは分からない。実際の発言だとしても、そうでなくても、決して公には出来ない、軽率で不適切な発言である。しかし、ある意味、偽らざる本音であろう。危険を顧みない仕事をする、自分の命と引き換えに仕事に臨む警察官という職業の重さを、その台詞から強く感じる。

警察官のひとりの人間としての姿、一般人と変わらぬ日常の延長を思わせる描写を用いて、非常時の緊迫感にリアリティーを持たせる緩急をつけた演出は見事。混乱・喧騒の臨場感、カメラワークのセンスも相まってスケールが大きい作品に仕上がっている。贅沢の限りを尽くした豪華な出演陣も見どころだ。

「あさま山荘事件」を多角的な観点で捕える上では、本作とは真逆の立場、連合赤軍からの視点で描いた実録・連合赤軍 あさま山荘への道と対にして観て頂きたいと思う。


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