自分勝手な映画批評
シンデレラマン シンデレラマン
2005 アメリカ 144分
監督/ロン・ハワード
出演/ラッセル・クロウ レネー・ゼルウィガー ポール・ジアマッティ
1928年11月30日、マディソン・スクエア・ガーデンでのボクシングの試合。ジェームス・J・ブラドック(ラッセル・クロウ)は対戦相手のグリフィスを第2ラウンド1分46秒でKOし勝利を収めた。ジェームスはこれで10戦連勝となった。

パパも約束しよう、お前をどこにもやらない

実在したプロボクサー、ジェームス・J・ブラドックのドラマティックな実話を元に描いた作品。

ボクシング映画の金字塔といえば「ロッキー」であるのは誰もが納得するところだろう。「ロッキー」がジェームス・J・ブラドックの生きざまを参考にしたのか私には分からない。ただ本作が、本来なら逆なのだが「ロッキー」を彷佛とさせるような作品であるのは間違いないだろう。

ジェームス・J・ブラドックは世界チャンピオンも狙える有望なボクサー。しかし、それは過去の話。現在はケガに悩まされてボクシングの戦績は長年に渡って低迷していた。ジェームスには妻と子供が2人いるのだが、落ち目のボクサーのファイトマネーだけでは家族を養えないので、波止場でも仕事をしていた。しかし、その仕事も世界恐慌の煽りを受けてままならず、ブラドック一家は光熱費も払えない程に困窮を極めていた。だがジェームスは、ボクシングの試合が控えていた。出場すれば50ドルがもらえる事になっており、勝てば報酬が上がるかも知れなかった。

まず驚かされ、心が痛むのは物語が始まって間もなく訪れる貧困の描写だ。この時代を舞台にした作品といえば、マフィアが幅を利かせた裏社会を描いた作品を思い浮かべてしまうのだが、それとは違った社会の裏側の描写に少なからず驚きを覚える。そして、その深刻さに否応無しに心が痛む。

但し、心が痛むばかりではない。心を温め、心を掴まれるポイントにもなっているのである。絶望の淵で試されるのは家族の絆であり真摯な親の姿。困難に直面して初めて大事なものが明確になるのかも知れない。だがしかし、わざわざ困難なシチュエーションを持ち出すまでもなかっただろう。そんな事をしなくてもブラドック一家は清くて深い愛情で包まれている。

つまり本作は、大前提として誠実な人たちが繰り広げるドラマなのである。確かに逆境が物語のバネにはなっている。しかし、もっと根本的な、絶対的な健全さが物語を突き動かしているのである。だから物語は力強い直線を太く描いて進んで行く。「シンデレラマン」なんて聞けばラッキーな物語を想像してしまいそうなものだが、必ずしもそういった類いの作品ではない。だからこそ、心の奥底まで浸透する作品になっているのだと思う。

実在の人物をクローズアップした伝記モノは、その人物の生涯、少なくとも半生を描いている作品が大方であるだろう。しかし本作は都合7年弱の事柄しか描かれていない。その期間だけでジェームス・J・ブラドックのすべてを網羅しているとするならば、あまりにも失礼だが、その期間が濃かったというのは間違いないだろう。

潔く描く期間を限定した事もあってか、本作に散漫な印象はない。2時間半に迫る比較的に長丁場だが、それを忘れさせる程の推進力があり、期待を裏切らない確かな充実感をもたらしてくれる作品である。


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