自分勝手な映画批評
カールじいさんの空飛ぶ家 カールじいさんの空飛ぶ家
2009 アメリカ 104分
監督/ピート・ドクター
声の出演/エドワード・アズナー ジョーダン・ナガイ ボブ・ピーターソン
映画館で見た冒険家チャールズ・F・マンツのニュース映像を見て胸を踊らせていた少年時代のカール・フレドリクセンは、同じく冒険好きな少女エリーと出会う。

冒険ブックの更新

妻に先立たれた老人と彼と行動を共にする少年の冒険を描いたアニメーション作品。

プロローグが秀逸。僅か10分程度の間に、主人公のカールと妻エリーとの馴れ初めから死別までが、ほとんど言葉を用いずに、しかし細かな機微までしっかりと、かつ、分かりやすく集約されている。まず、この部分でホロリとさせられ、同時に本作のメインのストーリーに望む準備が万端となる。

妻を亡くしたカールは、頑に妻との思い出に浸り、共に過ごした家を守ろうとする。しかし、再開発が進み、彼らの家を残して周囲は新しいビルの建設工事中。当然のごとく立ち退きを拒否するカール。だが、いさかいを起こし、強制的に老人ホームへと収容されそうになる。そこでカールは無数の風船を膨らませ、家ごと大空へと飛び立ってしまう。

風船で空を飛ぶという、子供時代に描くような無垢な発想力をポイントとする本作は、実に夢のある物語だ。ただ、どのような年齢層をターゲットにしているのか?という疑問も覚える。

三等身程の可愛らしいアニメーションキャラクターが繰り成す冒険物語は、紛れもなく子供が喜ぶ世界であろう。しかし、主人公は老人。登場人物に自己投影するのは、作品を楽しむ常套手段であろうが、投影先は、妻に先立たれた悲しみを背負った老人である。

もはやアニメーションが子供だけの娯楽ではない事は、重々承知している。大人をターゲットにしたアニメーションも数多くあるだろう。だが、憂いを帯びた辛辣な物語だけが大人の世界ではない筈。

綺麗ごとだと言われるかも知れないが、本作のような清らかでクリーンな世界も、大人が描く夢としてあって良いと思う。そして、このようなメッセージはアニメーションという媒体が適しているのではないかと思う。そういった意味では、設定や導入部分に共通点があるグラン・トリノと見比べるのは、大変有意義で面白いと思う。

もちろん、子供たちを置いてきぼりにしている訳では決してない。冒険活劇である本作は子供が楽しめる作品だ。本作で描かれている、勇気や行動力や優しさ、そして愛情の深さは、年齢関係なく尊ぶべき大切なものではないかと思う。


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