自分勝手な映画批評
ベスト・キッド ベスト・キッド
1984 アメリカ 128分
監督/ジョン・G・アヴィルドセン
出演/ラルフ・マッチオ ノリユキ・パット・モリタ エリザベス・シュー
9月のニュージャージー州ニューアーク。ダニエル(ラルフ・マッチオ)は友達に見送られながら母親(ランディ・ヘラー)と共に今まで過ごしていたその地を離れた。

アメリカから発信された日本の心

内気な少年が空手の修行を通じて心身共に成長していく姿を描いた作品。

本作公開当時の日本では、ジャッキー・チェンが主立って牽引していたカンフー映画のブームが巻き起こっていた。本作の製作の意図はカンフー映画ブームとは関係がなかったのだろうが、少なくとも当時の日本では、そのブームの中のひとつと目される作品だったように思う。但し、本作で描かれているのはカンフーではなく空手。そして本作の根底には日本が描かれている。

母親の仕事の関係でロサンゼルスへと引っ越してきたダニエル。引っ越して早々に友達が出来、近くのビーチでサッカーをして遊んでいた。ダニエルは、そのビーチに居合わせた可愛らしい少女アリに心を奪われる。アリもダニエルが気になる様子。そこにオートバイに乗った少年たちが現れる。その中の一人、ジョニーがアリに絡み始めたのでダニエルはアリを助けようとするのだが、逆にジョニーに叩きのめされてしまう。

本作の監督であるジョン・G・アヴィルドセンは「ロッキー」の監督でもある。ある種のサクセスストリーである本作は「ロッキー」のスタイルを半ば踏襲していると言えるだろう。だが、一方で大きく異なる点がある。それは少年の成長物語だという点である。

本作が少年の成長を促す手段として用いたのは空手、すなわち武道である。一見、スポーツと似ているようで大きく異なる武道。技術だけではなく人格の修得にも重きを置いている武道は、少年の成長と著しくリンクする事となる。

本作を観て、日本の良さを再認識させられるのかも知れない。それは日本人としては、ともすれば恥ずべき事なのかも知れないが、仕方のない事でもあるだろう。灯台下暗しと言うが、確かに内にいれば気付かない事、意識しなくても身に付いている事はある。しかし、隣の芝生が青く見えたゆえに招いた結果であるのならば話は違ってくるだろう。

隣の芝生が青く見えて、良いモノを手に入れようとする姿勢は間違いではないだろう。だが、得るモノの代わりに大切なモノを失うのならば、実体は大きく様変わりしてしまうだろう。

テレビで外国人が「日本人は自国の良さを海外で評価されて初めて気付く面白い国民性だ」というような旨のコメントをしていたのが記憶に残っている。確かに、その意見には思い当たる節はある。

本作は日本人だけが共感出来る作品ではないだろう。国を問わずに多くの人が共感出来る作品、すなわち本作を共感出来る下地は万国共通であるのではないかと思う。ただ本作には、日本人が忘れかけていた、あるいは失いかけていた守るべきアイデンティティーを気付かせてくれる作用が備わっているように思う。

2010年にジェイデン・スミスとジャッキー・チェンの出演でリメイク作品が製作されている。


>>HOME
>>閉じる



★前田有一の超映画批評★

おすすめ映画情報-シネマメモ