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粋でユーモラスなクライムアクション 原作は都筑道夫の小説「紙の罠」。ニセ札づくりをめぐる攻防を描いた作品。公開年、昭和37年の大卒初任給は17,815円だそうだ。作品内容を考えると、当時の貨幣価値を頭に入れておいた方が良いのではないかと思う。 ジャンルで言うならクライムアクションと言うべき作品なのだが、サスペンスでもバイオレンスでもなく、コメディー要素満載。キーとなる心理の応酬は、手に汗握る感じではないのだが、上手い具合に絡み合っている。それは、どこかルパン三世のファーストシリーズに通じるような作風だ。実際、本作の脚本のひとりである山崎忠昭は後にルパンの脚本も手掛けている。誰がルパンで誰が次元という訳ではないのだが、登場人物の間の抜けたキャラクターが実に良く、本作に面白味を与えている。 また、昭和30年代の、現代の感覚で見ればのどかな街並みも、作品の雰囲気に大いに影響しているのではないかと思う。当時でも珍しかったのかも知れないが、現代ではあまり見る事がない宍戸錠演じる主人公ジョーの駆る赤いメッサーシュミットKR200が颯爽と走る姿は、ちょっと不思議な感覚へと誘われる。このようなユニークながらもセンスを感じる車を用いるのもルパン的だと言えるのかも知れない。 宍戸錠は脇にまわる方が多い俳優だと思うが、そのキャラクターは主役でも魅力的だ。当時の彼への評価は分からないのだが、ユーモアラスでありながら、粋で洒落たセンスは現代でも通用する、と言うよりも、是非、現代で見てみたいキャラクターだ。 そういった意味では浅丘ルリ子も同様。おてんばなヒロインは、ありきたりなのかも知れないが、彼女が演じる事によって、設定以上のチャーミングさが生まれているように思える。現代の女優では味わえないと言うよりも、浅丘ルリ子ならではの愛らしい魅力なのだと思う。 余談だが、度々言われている、若かりし頃の長門裕之とサザンオールスターズの桑田佳祐がそっくりである事が本作で確認出来るのも面白い。 |
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★前田有一の超映画批評★ |
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