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狂ったリップ・ヴァン・ウィンクル 原作は大藪春彦の小説。戦場カメラマンだった男が戦地で芽生えた心の中の狂気を抑えきれず巻き起こすクライムサスペンス。 率直に申し上げて、本作の細かなリアリティーに関しては疑問が残る。その一因は時代のせいかも知れない。現代の視点からすると違和感を覚える節はある。だが、そんなのおかまいなしに押し寄せてくる緊迫感・緊張感は絶大で否応無しに圧倒される。 その緊迫感・緊張感を生み出すのが松田優作の演技だ。言い方は悪いが非常に気味が悪い。だが、鬼気迫る怪演に有無も言わせず引き込まれて行く。これこそ松田優作の真骨頂なのではないかと思う。こういった面を備え持つからこそ彼は現在でも存在感を示しているのだと思う。内に秘めたの狂気。しかし静かなる男の佇まいの時でも、その恐ろしさは滲み出ている。そして箍がはずれた時の爆発力。もはや野獣などという表現では生易しく思える程のこの世の悪魔が出現する。 松田優作の相棒となる鹿賀丈史も素晴らしい。彼の役どころは優作とは違い、結局のところ肝が据わっていない。しかし、ただのチンピラ風情とは訳が違う。優作とは違う狂気だが、こちらの切れ味も鋭い。私の持っていた現在の彼のイメージからかけ離れた演技がより一層衝撃に感じるのかも知れない。 室田日出男が二人とは異なる渋い存在感で対峙する。小林麻美の美しさは荒れ地に咲く花のごとく、本作の唯一の救いなのかも知れない。本来なら内容とは似つかわしくないクラシック音楽が実にマッチし、不思議な感覚に誘って行く。 |
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