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私を自由にして… 原作はジョディ・ピコーの小説。白血病の娘を抱えた家族を描いた作品。腎臓移植が必要な姉に臓器提供をする予定の妹が、それを拒む為に母親を相手に訴訟を起こしたところから物語が動き始める。 重く、苦しく、悲しい物語だ。誰が悪い訳ではない。誰ひとりとして悪くはない。だからこそ悲しみが胸に深く突き刺さる。運命は残酷だ。そして人生は辛く厳しい。 痛く苦しい病気を歓迎する人はいないだろう。だが無情にも、深刻な病魔が無垢な幼い少女に容赦なく襲い掛かる。回復する手立ては見えない。そんな八方塞がりの絶望の淵でさまよう時に見えた一筋の光。両親は我が子の為に、特別な遺伝子の組み合わせを持つ子供を作る決意をする。言わば病に侵された我が子を救う為のスペア。少女には妹が出来た。しかし人間のスペアなんてある筈がない。妹は、人格のある人間である。 そんな厳しい状況下で様々な想いが交錯する。親の想い、子供の想い、兄弟の想い、弁護士の想い、判事の想い、医者の想い、そして病気である当人の想い。それぞれの立場、年齢、そして経験から想いは異なる。だが、くり返しになるが誰も悪くない。なのに上手く進んで行かない。何故に報われないのか? ただただ、やりきれない、悲しい想いが募って行く。 かなりヘビーなテーマである。このようなテーマならば、3時間でも4時間でも時間を使っても良いのではないかと思う。しかし本作は、そのような手段はとらず、2時間内にきっちり収めた。だが、伝えるべき情報量が多い為、詰め込み過ぎな感じは覚える。 本作は、過去を振り返るシーンを所々に挿入して、その点を補っている。その為に、少々トリッキーに物語は進行して行くのだが、この手法が最後に生きる。本作の全容は最後に明かされる。それが本作の肝でもある。そう考えれば、現在と過去を行き来する展開は、本作には不可欠だったと言えるだろう。 素晴らしいキャスト陣が、本作により一層深みを与え、感動を呼び起こす。特に、難しい役柄でありながら、体当たりで迫真の演技を魅せる姉役のソフィア・ヴァジリーヴァは秀逸。彼女が最後に見せた強さと優しさは、いつまでも心を掴んで放さない。 |
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