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人に真実を話したことはある? 原作は本作で監督・脚本を務めたマイケル・クライトンの小説。列車に積まれた金塊を盗み出そうと企てる一味の様子を描いた作品。 盗みの計画を立てて、それを実行する。よくよく考えてみれば、本作のような盗みを作品の骨格とする犯罪作品は、その結末は別にして、ある程度、動かす事の出来ないフォーマットが決まっていると言えるだろう。ただ、ありきたりではあるが、それでも多くがこのフォーマットを利用するという事は、それだけ人を惹き付ける優れた要素が備わっている事の証明であるだろう。だが、その反面、作品の独自性や面白味を表現するスペースが限られている、すなわち、少ないスペースで勝負しなければいけない事を意味するだろう。 舞台は1855年。ショーン・コネリー演じるエドワードが狙うのは、クリミア戦争でのイギリス軍の給料に支払われる為に列車でロンドンからクリミアへと輸送される時価2万5000ポンドの金塊。だが、この金塊は、当たり前ではあるが厳重に警備されている。その中でも厄介なのは、金塊が納められた鋼鉄製金庫2つを開けるには、合計4つの鍵が必要となる事である。そこでエドワードは、昔なじみの手足れの盗人、ドナルド・サザーランド演じるロバートに声をかけ、仲間に引き入れる。 前述のとおりのありきたりなフォーマットではあるのだが、それを装飾する要素が優れているので実に面白味のある作品に仕上がっていると言えるだろう。本作を一言で言い表わせばスマート。スマートである事も、この手の作品にはありがちな作風であり手法ではあるのだが、より良く練られた構成・演出が紡ぎ出す盗みの計画とその手際の鮮やかさには心地よい爽快感を覚える。もちろん、その爽快感に至るにはスリルがあってこそであり、優れたスマートを生み出す為の優れたスリルも本作には充満している。 そんな舞台にショーン・コネリーの演技が良く映える。コネリーの懐の深い振る舞いがあってこそ本作のスマートが成立していると言えるだろう。しかも、そこに軽妙な笑いが加味される。この辺りはドナルド・サザーランドの領分である。とぼけた味のサザーランドはユーモラスで微笑ましい。そんなサザーランドに引っ張られるようにコネリーが呼応する。抜群のコンビネーションを魅せる名優二人の演技は本作の大きな見どころだ。 もうひとつポイントとなるのはアナログな世界を舞台にしている点だ。本作で感じる緩みは、物語を進める上では不可欠。但し、この緩みは決して本作だけに限った事ではない。それは舞台とした時代の所為である。犯罪がまかりとおる隙があるようでは現実の世界では困ってしまうのだが、人間の知恵をつぶさに感じられるアナログな世界は、作品を豊かにしていると言えるだろう。 本作は取り立ててアクション作品だと呼べる作品ではない。だが、列車のシーンでのアクションは実に見事であり、臨場感を伴う迫力が伝わってくる。これも、下手に特種効果に頼らない、アナログだから為せる技なのかも知れない。 |
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