自分勝手な映画批評
ザ・スナイパー ザ・スナイパー
2005 アメリカ/ドイツ/アイルランド 98分
監督/リチャード・シェパード
出演/ピアース・ブロスナン グレッグ・キニア ホープ・デイヴィス
女と一緒にベッドで寝ていたジュリアン(ピアース・ブロスナン)はふと目を覚ます。ジュリアンは女のハンドバッグをひっくり返しマニキュアを見つけて自分の足に塗り始めた。

殺し屋にしてはイイ奴だ

ベテランの殺し屋と平凡なビジネスマンとの奇妙な友情を描いた作品。

ピアース・ブロスナンといえば007/ジェームズ・ボンドである。しかし、本作のブロスナンはボンドとは対極な下品でイカれたキャラクターを演じている。ボンドのイメージから演技のスタイルを勝手に解釈してしまっていたのだが、本作はそれを覆し、更にはブロスナンの演技者としての豊かな技量を実感させられる作品である。

殺し屋のジュリアンは仕事で訪れたメキシコで仕事を指示する代理人に言われて、今日が自分の誕生日である事を思い出す。ホテルの部屋で寂しくなったジュリアンは、方々に電話をするのだが誰も相手にはしてくれない。万策尽きてバーへと繰り出すジュリアン。そこには仕事が上手くいって上機嫌のビジネスマン・ダニーが居た。

殺し屋が主人公の物語はバイオレンスであるのが常であると言っても過ぎる事はないと思うのだが、それに反して本作はバイオレンスを描いた作品ではない。しかもアクションシーンさえも、ほとんど見当たらない。どちらかと言えばコメディータッチな作風の本作。しかし、妙に毒々しい生々しさは醸し出している。そんなムードは、バイオレンスこそないものの、クエンティン・タランティーノ監督作品と少し似ているような気がする。

本作の肝となるのはブロスナンが演じる主人公ジュリアンのキャラクターである。前述のとおりボンドとは正反対の下品でイカれたキャラクター。ジュリアンがこのようなキャラクターであるので、作品がコメディーへと傾倒して行くのである。

但し、馬鹿げた乱痴気コメディーではないのが本作の良いところ。これにはグレッグ・キニア演じるダニーの存在が大きい。ジュリアン、もしくはダニーのどちらかだけを描いたのならば、それこそ乱痴気コメディーになったのではないかと思う。だが、二人を掛け合わせる事で見事な相乗効果が発揮され、不思議な魅力に辿り着いたのだと思う。

殺し屋の世界が本当にあるのか、私には知る由もないのだが、もし本当にあるのだとすれば、もしかしたら一般人からは本作のように映るのかも知れない。私には少なからずそんな感慨に至らされる作品である。そして、その非現実的なリアリティーが実にユーモラスに感じる作品である。そう感じるのは不謹慎なのかも知れない。ただ、その不謹慎なユーモアが本作の魅力であると思う。それとなくミステリーを匂わせる構成も良い。


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