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ブルース・リーの遺品 かなりの異色作だと言えるだろう。それもブルース・リー作品に限った事ではない。映画界すべての作品を見渡しても極めて異色だと言える作品だと思う。 本作はブルース・リーの主演作品であるにもかかわらず、彼が亡くなった後に製作された作品である。亡くなった後に公開される作品はあるが、製作されるのは異例中の異例であるだろう。もちろん、ブルース・リーが出演していない訳ではなく、生前に撮り終えたアクションシーンで出演している。本作は、そのアクションシーンを見せる為に製作されたと言っても過言ではないだろう。 とは言ってもブルース・リーが残したアクションシーンは僅かに3シーンのみ。当然、それだけで作品を成立させるのは不可能。そこで、回りくどい手法だが、吹き替えの役者がブルース・リーを演じてストーリーを進め、更には過去のブルース・リー作品の映像を各所に織り交ぜて面目を保っているのである。 ただ、この異常な製作方法では完璧な作品に仕上がる筈もなく、作中の至るところで不具合を露呈している。本作のブルース・リー(を演じれる俳優)は常に大きなサングラスを掛けている。いくら似ている俳優を起用したといっても、さすがに素顔をさらせる程ではなかったのだろう。また、吹き替えの俳優のアクションシーンも登場するのだが、キレ、迫力共に本物には到底及んでいない。奇しくも、そういったところでブルース・リーの偉大さを実感させられる。 但し、見どころがない訳ではない。本作のストーリーのあらましは、ブルース・リー演じる世界的な映画スターのビリーが、ショービジネスの世界を不当に牛耳り、ビリーをも支配下に収めようとする悪の組織に立ち向かうというもの。想像でしかないのだが、ブルース・リー本人であるならば、おそらく映画スターの役など演らなかったのではないかと思う。 ブルース・リーは実にユニークな俳優だったと思う。と言うのも、作品でどんな役柄を演じようともブルース・リーはブルース・リー、彼自体がスーパーマンやウルトラマンのようなヒーローだったのだと思う。そういった意味では素の本人と重なる映画スターという本作の役柄は、ファンの願望をダイレクトに満たしてくれる絶好の役柄ではないかと思う。 また、国際色が豊かな設定もブルース・リーが不在だからこそ成立したのではないかと思う。過去のブルース・リー作品で海外を舞台にしているものはあるのだが、ここまで国際色が豊かではない。何より、国際都市香港の特長が存分に活かされている点はブルース・リーとは関係なく本作が誇る特色ではないかと思う。 とはいっても最大の見どころは、ブルース・リー本人のアクションシーンであるだろう。彼が残した3つのアクションシーンは敵を倒して、更に新たな敵を迎えるというもの。それはステージをクリアして次のステージに進むゲームと同じ感覚だ。 中でも、218センチの長身NBAバスケットボールプレーヤー、カリーム・アブドゥル=ジャバーとの対決は見もの。もちろんジャバーは本職ではないのでアクションの完成度は決して高くはない。だが、そんなマイナス面があったとしても、身長差の大き過ぎる対決は、これまたゲーム感覚、あるいはマンガチックな感覚で、ドラゴンへの道での名シーン、チャック・ノリスとの対決とは違った興奮を覚える。ジャバーに稽古を付けたのはブルース・リーなのだろうか、ジャバーの構えがブルース・リーさながらの極端な半身なのが面白い。 キル・ビルでユマ・サーマンが着用していた黄色いトラックスーツのオリジナルは本作である。クエンティン・タランティーノが気に入ったのは服のデザインだけではないだろう。タランティーノが魅せられた何かを本作で探してみるのも良いだろう。 |
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