|
||||||||||||
すべて奪われた女 アンジェリーナ・ジョリーは振り幅を持った女優だ。アカデミー会員が評価する優れた演技力が備わっている一方、肉体を駆使したハードなアクションも実に絵になる。本作は後者に分類される作品である。 夫マイクとの結婚記念の日、表向きはリンク石油と看板を掲げているCIAの事務所から帰宅しようとしていたソルトだったが、ロシア人の亡命者が来たとの知らせが入り、面談をする事となる。ロシア人の名はオルロフ。オルロフはソルトを前に、ロシアでスパイの訓練を受けたロシア人の女の生い立ちを話し始める。続けて、その女がアメリカ副大統領の葬儀に参列する為にニューヨークに来ているロシア大統領を暗殺する計画があると密告する。そして、その女の名前はソルトだと言う。一気に仲間から疑惑をもたれるソルト。ソルトは咄嗟にマイクの危険を感じ、マイクに電話をするが繋がらない。一方、他所で取り調べを受ける為に移動していたオルロフは、護衛の2人を殺害し逃亡する。 CIAやMI6等、国の諜報機関のエージェントを描いた物語には現実の社会状況や国際情勢が絡んでくるのが定番だ。そこで本作が持ち込んだ社会状況・国際情勢は、何と東西冷戦、米ソの対立である。確かに、往年の多くのスパイ作品は東西冷戦をベースに善と悪を定めて作られていた。しかし、ベルリンの壁が崩壊し、二極に分かれた国際情勢が終息してから20年。およそ時代錯誤な設定であるのは言うまでもない。 だが、意外としっくりとハマって感じるのが面白い。スパイ作品が東西冷戦がなくなってから求めた敵はテロリスト。それは東西冷戦後の実際の国際情勢、世界的脅威とリンクしている。本作で東西冷戦を未だに主張するのは旧時代の残像、言わば体勢には成り得ないテロリストなのである。あえて時代遅れな東西冷戦を持ち込んだ事で、リアリティーを捻出したと言えるだろう。 但し、そういった背景など関係なくても、ノンストップな展開と迫力のアクションシーンには惹き付けられる。何度かに渡って変調するストーリーはミステリーとしての見応えもあるだろう。 比較的、コンパクトにまとめられた作品ではあるが、エンターテインメントの旨味はぎっしりと凝縮されている。そして、こういった作品のヒロインは、やはりアンジェリーナ・ジョリーが第一人者だと改めて実感させられる。 |
>>HOME >>閉じる |
|||||||||||
★前田有一の超映画批評★ おすすめ映画情報-シネマメモ |
||||||||||||