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ミニーマウスとロチェスター 原作は女性ジャーナリストのリン・バーバーの自叙伝。思春期の少女の姿を描いた作品。 いかにも青春作品らしい作品タイトルだ。しかし内容自体はスタンダードな青春作品とは少々毛色が違うように感じる。大人への扉を開いた少女の姿を描いたおおよそのストーリーは青春映画としてのスタイルに則っている。しかし、青春時代を描いた作品の根底にある特有の明快さは影を潜め、どこかドライで辛味をきかせた独特な視点で描かれている作品だと言えるだろう。 舞台は1961年、イギリス・ロンドン郊外のトゥイッケナム。教育熱心な父親の元で育つ女子高生のジェニーは、校内でもトップクラスの成績を保持しオックスフォード大への進学を目指していた。だがジェニーは勉強以外の事、特に芸術にも興味を持つ女の子でもあった。但し、その興味心を父親は理解してくれない。そんなある日、ジェニーは年上の男性デイヴィッドと知り合う。ジェニーは窮屈な日常を解放してくれるようなデイヴィッドに一瞬にして惹かれて行く。 ジェニーは成績優秀で見た目も可愛らしい非の打ち所がない女の子である。こういったキャラクターは、その裏側で人知れず闇を抱えているのが定番だ。確かにジェニーにも、そういった部分はある。だが、それ以上に芯がしっかりしている事がキャラクターとして上回っていると言えるだろう。 ジェニーは自分の裏側の闇を隠そうとはしない。なので、もはや闇だと位置付ける必要はない。恥じる事なく威風堂々と自らをさらけ出すジェニーは自信家だと言えるだろう。その自信は未熟さを補う為に背伸びした過信ではない。学力の優秀さだけに留まらない、客観性や先見性等を含んだ総合的な賢さが自信を裏打ちするのである。 ジェニーは一般的な夢見がちな女の子とはひと味違う。単なる優等生でもない。ある種、大人顔負けの成熟した人間性を持った女の子だと言えるだろう。そんな女の子が中心となって展開される物語だからこそ、通常の青春映画とは違った感慨に至るように思う。 それに引き換えジェニーの近親の男性陣は俄然子供っぽい。この事がジェニーの大人びたキャラクターを一層引き立てる。加えて、他の女性陣が、同調ではないのだが、概ねジェニーの心境を理解している事も男性陣の子供っぽさを強調させている。 本作には、当時の世情をシニカルに切りとろうとする意図が随所に感じられる。この男女のコントラストも、間接的ではあるのだが、旧態依然とした男尊女卑な世の中を皮肉たっぷりに風刺しているように感じる。 本作の魅力はジェニーを演じたキャリー・マリガンの魅力だと言っても過言ではないだろう。本作のあらましを一手に担っているのはジェニーであり、当然、演じるキャリー・マリガンの技量に本作の出来は掛かってくるのだが、その重責を立派に果たしている。 才色兼備なキャラクターを完璧なまでに体現し、その上さらに、隙のないキャラクターであるがゆえに限定された感情の起伏を表現するスペースで、しっかりと心情を伝達する演技は見事。何よりキャリー・マリガンの一挙手一投足が、この上なくチャーミングである事が本作の最大のポイントではないかと思う。 頭が固く内弁慶だが、どこか憎めない父親を演じたアルフレッド・モリーナも良い。 |
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