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ニュー・ホームズの誕生 シャーロック・ホームズの物語を読んだ経験がある人はどれくらいいるのだろうか? 例え読んでいなくても、名探偵シャーロック・ホームズが活躍する推理モノで助手にワトソンがいる事ぐらいは大多数の人が認知しているのではないかと思う。 本作はアーサー・コナン・ドイルの原作にはないオリジナルのストーリーらしい。ただ、基本的な設定は原作を踏襲しているので原作を読んでおいた方が本作に臨むには有利であろう。だがしかし、原作を読んだ事がなくても存分に楽しめるエンターテインメントに仕上がっていると思う。 ホームズの活躍によって捕らえられた連続殺人犯のブラックウッド卿は、死刑を宣告され処刑される。事件は一件落着かと思われていたのだが、ブラックウッド卿が蘇り、墓場から逃げ出したとの知らせが入り、再びホームズは事件を追う事となる。 舞台となる19世紀暮れの社会を壮大なスケールで再現させた作品世界には感服。この事だけでも本作が希代のヒーロー、シャーロック・ホームズを描くに相応しい大作である事を実感させられる。但し、本作は原作を含めたシャーロック・ホームズ作品の中では異色と呼ばれる作品らしい。 確かに本作で描かれているホームズは一般的に知れ渡っている紳士のイメージからは程遠い。通念としてのホームズは、偏屈な面もあるのだが、それをも網羅した上に成り立つ、紳士たる自覚を持った誇り高き男であると思う。だが、本作のホームズは偏屈な面はそのままに紳士な部分が排除された、ある意味特種な人物として描かれているように思う。それは、ずば抜けて頭は良いのだが、常人の感覚からは馴染まない滑稽な変人のようにさえ映る。 また、アクションシーンが多い事も他のホームズ作品とは一線を画するであろう。アクション作品と言っても差し支えない程ふんだんに盛り込まれ、しかも高いレベルで実現されている。さらにはそこに、コミカルなホームズ像やロバート・ダウニー・Jrの風貌が加わると、まるでジャッキー・チェンの作品を観ているような錯覚にも陥る。ただ、その事で作品に躍動感が生まれ、ショーアップしたエンターテインメント性が抜群に向上したのではないかと思う。 いささか子供じみているようにも感じるが、ロバート・ダウニー・Jr演じるホームズとジュード・ロウ演じるワトソンのコンビネーションは絶妙。この関係性も本作のショーアップ化に大きく貢献していると言えるだろう。タイプは異なるのだが、本作を華やかに彩るレイチェル・マクアダムスとケリー・ライリーの女優陣も実に美しく魅力的である。 騒がしく感じる作風は、いかにもガイ・リッチー監督作品らしいと言えるだろう。但し、他のガイ・リッチー作品と比べると、その様相は随分と抑えられ、彼にしてみればオーソドックスな造りと言えるのかも知れない。何より複雑過ぎず、分かりづらくはないのは観る者に優しい。その辺りは、彼の作風の変化なのかも知れないが、深読みすれば、偉大なるシャーロック・ホームズ作品に対する敬意の表れのようにも感じる。 ヒーローモノのコミックを映画化した作品があるが、本作は、その類いに属する作品ではないかと思う。もしかすると原作のファンには戸惑いを感じる作品だと言えるのかも知れない。だが、イメージが固定されている絶対的なヒーローに変化を求めたチャレンジ精神は讃えたいと思うし、何より優れた娯楽作品として仕上げた事を高く評価したい。 ある意味、本作と対極と言っても良いかも知れない、原作のイメージに一番近いとされるジェレミー・ブレット主演のイギリスのテレビドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」も是非お勧めしたい。 |
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