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あの人には、もう未来なんてないんだよ 原作は東野圭吾の小説。娘を殺された父親の復讐劇を描いた作品。 人間の欲とは無限であるだろう。だが、自らを律するからこそ人間であるのだろう。そして個人での抑制の限界を補う為に法律があり、それによって社会が形成されているのだろう。 本作は救いのない物語だ。何の罪のない少女が誘拐され惨殺される。犯人が犯した行為は、どの観点に立っても許す事の出来ない、極限までに非人道的な行為である。ただ、殺された少女の父親も黙ってはいられない。もし、これがマンガなら、ヒーローが極悪非道を退治してくれただろう。だが当たり前だが、現実ではそうはいかない。父親は犯人への復讐を自らの手で行なう事を決意する。 犯人と父親の心情と行為を同一線上に並べるのは不可能である。だが、自分を律する事が出来ず、法を犯すという意味では結果として同じなのである。 本作は結局のところ、犯人対父親の構図を描いているのではなく、対法律を描いていると言って良いのかも知れない。被害者家族の無念と犯人に対する憎しみは、決して法律が解決し解消してくれる訳ではない。どんなに重い罰を犯人に与えたとしても、殺された被害者は絶対に戻ってこないのである。 法律とは、決して万能でも完全でもない。本作は、そういった不満や警告をメッセージとして掲げた作品だと言えるのかも知れない。しかし、その事以上に、やるせない虚無感だけが心に残るように思う。そして残念ながら、それが今ある現実なのだろう。 テーマがテーマだけに重苦しい閉息感を感じさせながら展開して行く本作。俳優たちも変に飾り気を出すのではなく、持ち場に見合った適温で各々の役どころを演じている。その中でも伊東四朗の演技が印象に残った。元々貫禄が備わった俳優であると思うのだが、本作では、その渋みが一段と増しているように思う。単なる青二才で終わらない竹野内豊も良い。 |
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