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ベストを尽くす? 負け犬はそう言い訳をする 刑務所からの脱獄を描いた作品は多くあるのだろうが、逆に、現在は閉鎖されているとはいえ、刑務所への侵入を試みる姿を描く視点は、中々ユニークなのではないかと思う。 それが実現出来るのも、本作のタイトルになっているロックと呼ばれるアルカトラズ刑務所を舞台にしているからである。この刑務所は(本来、ほぼ全ての刑務所がそうだと思うのだが)極めて脱獄が困難らしく、そこからの脱獄を描いた「アルカトラズからの脱出」なんて映画もある。 脱獄が困難であれば、侵入も困難であるのは当然。この逆転の発想は、実に良い目の付けどころだと言えるだろう。また、大変不謹慎な物言いになるのかも知れないが、エンターテインメントの題材に用いられるような地を所有している事は、アメリカにとって財産であるとも言えるだろう。 国の待遇に大きな不満を持つ、エド・ハリス演じる海兵隊のハメル准将は、同志を連れ、軍の施設から猛毒の神経ガスを強奪し、さらには観光客を人質にとってアルカトラズ刑務所に立てこもる。完璧なまでに防備されているアルカトラズ刑務所への侵入は不可能。そこで、アルカトラズ刑務所からの脱獄に成功した経験のあるショーン・コネリー演じる服役囚のメイスンの知恵を借りる事になる。ただ、メイスンの罪状には複雑な事情が隠されていた。 本作は、ハリウッド製アクションの王道とも呼べる作品なのではないかと思う。スリリングな展開が持ち味の本作には似つかわしくない表現かも知れないが、楽しませる事を心得た、どっしりとした安定感が本作には感じられる。その安定感とは、ある意味、完成度だとも言えるのかも知れない。そういった、しっかりした土壌があるからこそ、作中のスリルを楽しめるのだと思うし、さらには、観る者の満足度へと繋がって行くように強く感じる。 そんな中でも、私が感心させられたのは、ハメル准将の犯行の動機である。ハメルは自分の私欲の為に犯行を企てたのではない。報われずに散った仲間の名誉の為に行動を起こすのである。だからといって決して許される行動ではない。だが、大義の為に抹殺された、言い換えれば、人々の幸せの為に人知れず犠牲になった仲間を思う心情は察する事が出来る。同時に、このような犯行動機を作品で取り上げたのは、権力の暴挙や、そこから生まれた歪みに対する批判・警告のメッセージとも受け取れる。 プロフィールを確認すると、本作公開時のショーン・コネリーの年齢は60歳代の半ばである。なので、本作での過激なアクションはスタントマンによって行なわれていたと想像出来るのだが、それでもアクション作品に決して不自然ではなく、しっかりと収まる彼の演技と存在感は実に素晴らしいと言えるだろう。 ショーン・コネリーと言えば007/ジェームズ・ボンドというのは、ぬぐい去れないイメージであるだろう。本作で彼が演じるメイスンにジェームズ・ボンドのイメージを重ねる、もっと言えば、ジェームズ・ボンドの成れの果ての姿だとして観賞に臨むのも面白いのではないかと思う。 |
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