自分勝手な映画批評
さらば友よ さらば友よ
1968 フランス 115分
監督/ジャン・エルマン
出演/アラン・ドロン チャールズ・ブロンソン
軍医のバラン(アラン・ドロン)と傭兵のプロップ(チャールズ・ブロンソン)はアルジェリアの戦地より冬のマルセイユに帰還する。バランはそこで、見知らぬ女(オルガ・ジョルジュ・ピコ)に声を掛けられる。

男が交わす約束の意味

男同士の奇妙だが粋な友情を描いた作品。

アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソン、二大スター共演だけでも大変贅沢なのだが、フランスらしいと言うべきだろうか、少しひねりを効かせたセンスが、さらなる魅力的な世界を創造している。

甘いドロンと雄々しいブロンソン、スマートなドロンとひょうひょうとしたブロンソン。年齢的にも少々開きのある二人のコントラストがキーとなり物語をリードして行く。中々、上手い具合に噛み合わない二人なのだが、ひょんな事で同じ目的を持ち、時間と場所を濃密に共有する事になり、新たな局面を迎える。

一番の見どころはラストシーンであろう。このシーンを描く為に本作があり、それまでのシーンがすべて序章だと言っても過言ではない。キザで笑ってしまうようなシーンに思えるかも知れないが、現代では忘れかけられている粋な大人の男の姿が、僅かな時間に見事に集約されている、味わいある名シーンだ。

そんなラストシーンに辿り着くのも、本作が大人の男の物語だからである。互いが出合う事によって感化され人生が変わるといった類いの話ではない。ちょっと世間からズレてはいるが、れっきとした大人の男が自らの意志と自らの責任で事を起こす物語である。だから彼らの約束は固い。そこには彼らのプライドが含まれているからだ。だからこそラストシーンに重みと深みを感じる事が出来るのだと思う。

本作で印象的なのは、チャールズ・ブロンソンが満タンのコップの中にコインを落とすシーンだ。その行為自体にどんな意味があるのか、また、その行為が本作が発祥なのか、詳しい事は私には分からない。ただ、私はやった事がある。

本作に限らず、昔の映画には真似をしたくなるような行動やポーズがあったような気がする。確かに現在の映画は昔に比べて、あらゆる面で成熟し、完成度も高くなっているように感じる。だが、現在の映画には真似をしたくなるような印象的なシーンが少なくなったような気がする。得意げにコインを落とすチャールズ・ブロンソンの顔を見ながら、古き時代の良さを感じると同時に、少なからずの寂しさを覚えた。


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