自分勝手な映画批評
ザ・バンク 堕ちた巨像 ザ・バンク 堕ちた巨像
2009 アメリカ 117分
監督/トム・ティクヴァ
出演/クライヴ・オーウェン ナオミ・ワッツ
ドイツ、ベルリン中央駅の前の車の中でIBBC銀行の裏事情を情報提供者から聞き出すニューヨーク検事局のシューマー。車を降りてまもなく、彼はいきなり倒れた。

巨大銀行を追い詰めろ!

メガバンクの裏の顔を暴こうとするインターポール捜査官の奮闘を描いたアクションサスペンス。

冒頭、いきなり嘔吐のシーン。観ていて決して気分が良いものではないのだが、そのシーンが本作の方向性を示しているように感じる。物語を端的に言い表わせば、ヒロイックな主人公が活躍する作品と言えるだろうが、その味付けはリアリティーを重んじている。

世界有数のメガバンク、IBBC銀行。しかし、その実態は利益追求の為には、あらゆる行為も厭わない組織である。頭が良く、バイタリティーもあるのだが、秩序や道徳を軽んじる利己至上主義は、現代社会を象徴しているように感じる。

その銀行に対して苦い経験を持つインターポール捜査官のルイは執念を持って捜査に挑むのだが、IBBC銀行の組織力は強固で一枚上手。八方塞がりであらゆる場面で捜査に行き詰まる。

主人公ルイ役はジェームズ・ボンド役の候補にも名を連ねたクライヴ・オーウェンなので、スマートに演じるかと思えば、いたって泥臭い、昔ながらの一本気な捜査官風情を演じている。

しかし、どこかで見たような画一的なスタイルにならないのは、彼の個性であろう。獰猛な雄のフェロモンを全身から漂わせつつ、それとは正反対に困った顔が特徴的なクライヴ・オーウェン。その面構えは本作にリアリティーを与える効果の一翼を担っているように感じる。

本作のひとつのハイライトは銃撃戦であろう。舞台となる白いモダンな美術館とは相反するような血なまぐさい死闘。簡単に人は死んでしまう。骨太なストーリー、クールでスタイリッシュな映像の中、ショッキングなリアリティーが本作には溢れている。


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