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三銃士の答え、三銃士が出した答え インドを舞台に、スラム街出身の青年のクイズ番組「クイズ$ミリオネア」に挑む姿を通じて、彼の波瀾の人生に迫った作品。原作はヴィカス・スワラップの小説「ぼくと1ルピーの神様」。 私は「クイズ$ミリオネア」は日本のオリジナルの番組だと思っていたのだが、どうやら違ったようだ。ただ、まるで知らない番組を題材にされるよりも、番組のルールが予め分かっている馴染みある番組を題材にされる方が、作品に臨むハードルは低くなる訳であり、日本人にとっては好都合なのだと思う。 しかし、日本と違う面も認識していなければならない。本作の根底にあるのは貧困・格差であり、そこから生まれた不幸だ。 日本も昨今、格差社会などと言われている。だが、一億総中流なんて言われた程、中流意識の強い国でもある。それは、多くの人が少なくとも大きな不自由・不便さを感じない程度の生活を送っている、あるいは、その生活を送る為に必要な社会的な基盤が出来ている表れだとも言っても良いのではないかと思う。 もちろん、各人・各家庭によって事情は様々であり、一概には言えないのだが、全般的に日本は経済的、そして環境的にも恵まれている国なのだと思う。そう考えると本作で描かれている貧困・格差の激しい世界での「クイズ$ミリオネア」、さらには一獲千金の意味合いは、日本で考える以上に大きいものなのだと思う。 ただし、本作は上っ面だけを捉えた、いわゆるサクセスストーリーでは断じてない。恵まれない青年が、気転を使って夢を掴むという類いの話でもない。 例えサクセスストーリーだと称するとしても、それは人間性に重きを置いた人生のサクセスストーリーである。苦難の連続の中でもたくましく、頑として自分の意志を貫く青年の姿。一獲千金を夢見がちな状況下では尚更、彼の純粋で強い志は眩しく輝く。 「クイズ$ミリオネア」と人生をシンクロさせる描き方は秀逸。番組に食い入るのと同じように、物語にのめり込んで行く。また幼少期から青年期までの成長を描く上で、演じる俳優が年齢に応じて変わるのだが、皆、瑞々しく素晴らしく演じている。 第81回アカデミー賞、作品賞・監督賞・歌曲賞・作曲賞・編集賞・録音賞・撮影賞・脚色賞受賞作品。 |
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