自分勝手な映画批評
スピード・レーサー スピード・レーサー
2008 アメリカ/ドイツ 135分
監督/アンディ・ウォシャウスキー ラリー・ウォシャウスキー
出演/エミール・ハーシュ クリスティーナ・リッチ
頭の中はレースのことで一杯な少年スピードは、学校に迎えに来たレーサーである兄のレックスにせがんでレース場に連れて行ってもらう。

CGを駆使した日本アニメの映像化

日本のテレビアニメ「マッハGoGoGo」が原作。「マトリックス」シリーズで名を轟かしたウォシャウスキー兄弟が監督。CGを駆使したウォシャウスキー兄弟の世界観が存分に味わえる作品。

「マッハGoGoGo」はアニメ創成期と言っても過言ではない時代の作品だ。確か原作アニメに携わった制作者は誰ひとり自動車の運転免許を持っていなかったという話。マイカーはまだ夢だった時代。時代を考えると現在ほど運転免許は必須ではなかったと考えられ、運転免許の未取得は何ら不思議ではない。逆に自動車や運転の知識が乏しいからこそ、型に捕われない自由で破天荒な発想が思いついたのであろう。自由で破天荒な発想は子供向けアニメ番組のある意味基本だ。

その破天荒な世界観を映像にしたのはCG技術の多用だ。CG技術は本作の見どころであるカーアクションに素晴らしい躍動感を与える一方、原色が鮮やかな独特の色彩も生み出している。この色彩といい、アナログとデジタル、もしくはレトロとフューチャーが混在した世界観は60年代の世界観を最新の技術で描いているようなオシャレな印象を感じた。と同時に、20世紀半ばに思い描いた21世紀の世界を具現化しているような印象も感じた。「鉄腕アトム」で描かれていた21世紀は本作のような世界観ではないだろうかと私は感じた。現在以上に未来が夢だったであろう原作アニメが製作された時代。その時代に想像した未来のそのままのカタチでの具現化は、単にアニメの実写化という粋に留まらず、どこかファンタジーな作品ともとれる世界観を生み出している。

考えてみればカーレースの世界に正義と悪の図式を当てはめるのには、到底無理がある。前例がいくつもあるように、よっぽどヒーローモノのほうが作品に深みを与えられただろう。難しい題材の子供向けのアニメの原作を、必ずしも大人向けとは言い難いかもしれないが、しっかりと長編映画として仕上げた制作者側の手腕は誉めるべきであろう。ところどころ、原作アニメの描写をそのまま用いているようなシーンは思わずニヤっとさせられると同時に、原作に対するリスペクトを感じとれて好感が持てる。


>>HOME
>>閉じる





★前田有一の超映画批評★

おすすめ映画情報-シネマメモ