自分勝手な映画批評
世界最速のインディアン 世界最速のインディアン
2005 ニュージーランド/アメリカ 127分
監督/ロジャー・ドナルドソン
出演/アンソニー・ホプキンス アーロン・ジェームズ・マーフィ
眠っている時も愛車のインディアンのことで頭が一杯のバート(アンソニー・ホプキンス)は、早朝にインディアンのエンジンを掛け爆音を響かせてしまい、隣人のジョージ(イアン・レア)にどやされてしまう。

愛される男

1960年代、ニュージーランドの田舎に住む老人が、アメリカのボンネビル・スピードウェイで行われる大会で自身のオートバイで世界最高速度の記録を目指す実話を元にした作品。タイトルにもあるインディアンとは、すでに消滅してしまっているが、アメリカで最古のオートバイのメーカーである。

「世界最速」といい「インディアン」というオートバイのメーカーの名前といい、タイトルだけ見ると男臭い世界を連想しがちではあるが、必ずしもそうではない。タイトルどおりの男のロマンは確かに本作の軸ではあるが、人とのふれ合い・人間の温かみというのも本作のもうひとつの軸となっている。と言うか、人とのふれ合い・人間の温かみという軸があるからこそ、夢を追い求める男のロマンに気持ちが高ぶるのだと思う。

本作には愛すべき人間が描かれている。変わり者ではあるが、物おじせず、分け隔てなく人と接する彼の人間性が愛される所以だ。そこには、老人という設定やオートバイ好きという設定は意味をなさない。男であることすら意味はない。人間として素晴らしいのだ。

そこに「夢を追い掛けない人間は野菜と同じ」と考える男としての生きざまがリンクする。年齢を重ねるにつれチャレンジする精神力と行動力を奮起させるのは難しくなる。少年の心を持つ男性と称される人物がいる。自分の夢を追い求める主人公バートは、まさに少年の心を持った男性だ。しかし少年の心とはそれだけではない。変な先入観や偏見を持たずに他人と接する心も少年の心と言えるだろう。損得に関係ない無垢な心持ちこそ少年の心と言えるのではないだろうか? バートのいくつになっても夢を追いかけるストイックな人物像と誰にでもフレンドリーな人物像は少年の心という観点から言えば相反することない。彼の人物像が本作の肝と言えるだろう。

バートを演じるアンソニー・ホプキンスが何よりチャーミングであり、愛される男を素晴らしく演じている。彼に関係する登場人物は多く、エピソードも多い。その為、少し駆け足で作品が展開する感は否めないが、その短い時間でのエピソードでしっかりと感動をもたらしてくれる。


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