自分勝手な映画批評
スタンドアップ スタンドアップ
2005 アメリカ 126分
監督/ニキ・カーロ
出演/シャーリーズ・セロン ウディ・ハレルソン フランシス・マクドーマンド
夫の暴力に耐えられなくなったジョージー(シャーリーズ・セロン)は二人の子供をつれて故郷の北ミネソタに帰ってきた。ジョージーは保守的なこの街で若い時の行いも重なり偏見の眼差しで見られてしまう。

現実というトゲが心に突き刺さる

世界初のセクシャルハラスメント訴訟となった実話を元にした作品。

テレビでアメリカ人が言っていたのだが、アメリカでは日本で言うところの「男らしさ」「女らしさ」という話題は差別的な意味合いが含まれており、話題にすること自体がタブーもしくはナンセンスらしい。残念ながら、私にはその真偽を確かめる術がないので、その発言が正しいのかはわからないが、興味深い意見だと思って聞いていた。

あくまでも持論だが、私は男と女には持ち場があると思う。例えば、力仕事は男性の方が適していると思う。しかし、これは相対的な話であり、一般的な男性よりも力持ちの女性がいるのも事実であろう。そう考えると性別での分け方は実にナンセンスだ。性別だけではない。就職の際の学歴・年齢等の基準も本当にナンセンスだ。これは一個人として評価しない面接官や人事部の怠慢・手抜き仕事だと言えようが、相対的・一般的な見解を総合して、ある程度の基準を設けるのも仕方がないと思う。

しかし本作での炭坑夫達の行いはあまりにもひどい。これは男女うんぬんということではなく、人としてどうか?という次元である。善悪の判断がつかない、まさに小学生以下のレベルである。だからストーリー的にはイライラするばかりだ。だからこそラストの爽快感は極まりない。

リスクを承知で男の職場である炭坑に勤めたのだから仕方がないとの意見もあるだろう。しかし現実はあまりに酷かった。しかし「郷に入らば郷に従え」という言葉もある。従う・従わないの判断は人それぞれだろうし、さらには郷に入ってしまったら、判断する思考や感覚が麻痺してしまうことも多いだろう。しかしそれが人間の尊厳にかかわる大事なことなら、従う・従わないの線引きはハッキリしなければならないのだと思う。

そういった意味でも単に男女差別だけを描いた作品ではない。親子・周囲の人との関係もしっかり描かれている。特に親友の旦那と傷ついた息子の関係は年齢を越えた、あるいは年齢差があるからこその絆を感じた。

本作の原題は「North Country(ノースカントリー)」である。アメリカでは意味を成すのだろうが、日本ではわかりづらいと考えたのか邦題を「スタンドアップ」に変えた。同じ英語タイトルであり、しかも使い古されたひねりのないタイトルである。しかし、このタイトルは本作の真直ぐな力強さを表している。良いタイトルだ。


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