自分勝手な映画批評
レインディア・ゲーム レインディア・ゲーム
2000 アメリカ 104分
監督/ジョン・フランケンハイマー
出演/ベン・アフレック シャーリーズ・セロン ゲイリー・シニーズ
雪が積もるクリスマスの夜、5人のサンタクロースが倒れていた。その6日前、アイアン・マウンテン刑務所では、3日後に仮出所を控えたルディ(ベン・アフレック)が、同じく3日後に仮出所する予定のニック(ジェームズ・フレイン)から文通相手の女アシュレー(シャーリーズ・セロン)の話を聞かされていた。

故里のシドナウに戻って、クリスマスを祝って…

刑務所を出所した男が、身を偽ったが為に巻き込まれて行くサスペンス。

作為・不作為を問わず、ちょっとした過ちが自分ではコントロール出来ない大事を引き起こし、ど壺の深みにはまって行く。本作ほどの悲惨な状況ではないにしろ、もしかすると身に覚えがある人もいるのではないかと思う。もし、そのきっかけが、ちょっとした軽はずみな出来心であるならば、後悔してもしきれないだろう。

ベン・アフレック演じる主人公ルディは、刑務所生活で抑圧してきた欲情を、抑えきれずに咄嗟の嘘をつく。本人にとっては些細な虚偽であり、時期を見て正直に打ち明けるつもりでいたのだが、もはや後の祭り。自ら悲劇のドアを開けてしまう事になる。

本作は実にチープな物語だ。それは登場人物が皆、チープであるからに他ならない。本作に正義はないし、善人もいない。ただ、「塵も積もれば山となる」ではないが、チープな心理と人間模様の積み重ねは、悪の極みへと登り詰め、見事にサスペンスを構築して行く。

ポイントとなるのは、主人公ルディのキャラクターだ。賢明だとも呼べるのかも知れないが、それ以上に口が上手いと感じるキャラクター。そんな彼の気転が本作のキーとなる。

だが、それだけではストーリーは展開して行かない。ルディを使って悪巧みをするゲイリー・シニーズ演じるガブリエルの間抜けさが、ルディの出任せに振り回されストーリーを成立させる。狂気の危険人物ガブリエルの隙と、ルディのずる賢さが両輪となり、奇妙なバランスを保ちながら物語を牽引して行く。

本作ではヒロインも重要な存在である。シャーリーズ・セロンの妖艶で、しかも確かな演技力は本作を成立させるのに不可欠な要素である。


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