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輝ける足跡の裏側で… 偉大な盲目の黒人ミュージシャン、レイ・チャールズの半生を描いた作品。彼の代表曲は数多くあるが、日本ではサザンオールスターズの「いとしのエリー」をカバーした事でも有名なのかもしれない。確か、忌野清志郎が下唇の下にヒゲを伸ばしていたのは彼の影響だったと記憶している。 本作の公開を待たずにレイ・チャールズは逝ってしまった。ただ、製作中にはまだ存命であり、製作に当たり、美化するような描き方はしないようにと注文をつけたらしい。その意見が尊重されてなのか、本作は、かなり手厳しい、もっとハッキリ言えば、人間性を疑いたくなるような描かれ方をしている。 これには時代が影響しているのかもしれない。現在よりも奔放な生き方が許されていた時代だったのかもしれない。それ以前に、人種、貧困、少年時代の体験、そして盲目と彼にまつわる想像を絶する苦悩から導き出された行いだったのかも知れない。だが、それらを念頭に置いたとしても、かなり酷い描かれ方をしているのではないかと思う。 しかし本作は、公開には間に合わなかったのだが、レイ・チャールズの生前に製作が行われていた事実を忘れてはならない。生きている間に伝記映画が作られる人物。それだけでも、彼に対して人々が、どういった念を持っていたのか想像するに容易い。 実際にはレイ・チャールズの人生や人となりが、どれだけ知れ渡っていたのか私には分からない。だが、本作で描かれている内容には公になっているであろう不祥事も含まれており、ならば、少なくとも、その件に関しては多くのアメリカ人は知っていたであろうと考えられる。それでも彼の偉大さは称えられている。 そういう見解を持って本作に臨めば、大変意味深い作品なのではないかと思う。人各々に趣味や好みがあるとは思うが、レイ・チャールズの残した音楽の素晴らしさは広く認識されている。その裏側で、このような日常が展開されていた。彼の意思に基づいていたのかは不明だが、偉人を決して聖人君子として描かなかった本作の潔さを評価したい。 荒んだ日常の中にあっても、彼は音楽に対して誠実であった。もちろん、それこそが彼が偉大たる大きな所以である。彼の音楽への情熱、彼の音楽の素晴らしさは迫力の演奏シーンによって表現されている。また、彼が自分のスタイルを確立するプロセス、名曲誕生のエピソードも大変興味深い。 とにかくジェイミー・フォックスのレイ・チャールズに成り切った演技が素晴らしい。トレードマークとなるサングラスがあるにせよ、体のサイズが大きい以外はパーフェクトではないかと思う。本作の演技で彼は第77回アカデミー賞の主演男優賞を受賞している。 |
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