自分勝手な映画批評
2001年宇宙の旅 2001年宇宙の旅
1968 イギリス/アメリカ 141分
監督/スタンリー・キューブリック
出演/キア・デュリア ウィリアム・シルベスター ゲイリー・ロックウッド
陽が昇り、大地ではヒトザルたちを含めた動物たちが活動していた。ある日、ヒトザルは謎の黒い石柱を発見する。

ひれ伏すしかない、圧倒的な想像力と具現力

残念な作品タイトルである。2001年は、もう過ぎてしまった。すなわち、本作が公開された1968年に思い描いた2001年は実現されなかった事になる。ちなみに鉄腕アトムの誕生日は2003年4月7日である。

しかし、それも無理もない。昔、21世紀とは、とてつもない未来に思えた。あくまでも私の感覚ではあるのだが、少なくとも1980年代半ば辺りまでは、そう感じていたのではないかと思う。そして同時に、その辺りまでは夢を夢として語る事が出来た時代であったように思う。

驚愕なのは、本作の想像世界の描写である。特に宇宙ステーションの内部、白を基調としたインテリア、過不足のない機能美を感じさせる機材等は現代の感覚でも遜色ない、いや、現代が考える近未来も本作の描写を手本にしていると思える程の高いクオリティーのセンスを感じさせる。

さらには、広さと深さをまじまじと感じさせる宇宙空間の壮大な描写も圧巻である。これを、派手な音楽や効果音を用いて無駄に感情を煽るのではなく、オーケストラが奏でる格式高いクラシック音楽と、サイレント、あるいは必要最小限の音で作り出す静寂で包み込み、実に魅力的で完璧な世界を創造している。

本作で提示している描写が現実的なのかは私には分からない。しかし、この上ないリアリティーは感じさせる。この描写を堪能する目的だけでも、本作を観賞する価値があると思う。

三部構成のストーリーは正直難しい。静かなる世界の美しさの追求は、反面、台詞や説明が著しく乏しくなり、理解に苦しむ面もある。それは、どこか抽象的な絵画を見せられているような気分にさせられる。

その中でも、高度に発達したコンピューターと人間との関係を描いた第二部は、比較的分かりやすい。進化、発展、発達等は功罪どちらも合わせ持っているだろう。とかく、陽の当たる場所ばかりに注目して飛びつき、そこから産み落とされる負の遺産に関しては、後手後手の後処理になってしまう事が目につく。仕方のない面もあるとは思うのだが、効力ばかり求めていては痛い目に合う。

本作では、その事ばかりを強調している訳ではない。しかし未来とは不確かであり、想像の範疇に収まるものではないと訴えかけているのかも知れない。そう考えれば、人類がまだしっかりと足を踏み入れていない、未開拓で未知な世界である宇宙を舞台とした本作に、常人の理解を超えた不可解さがあっても当然だと言えるのかも知れない。


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