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あなたは誰? 世界的な発明品を巡る攻防を描いた作品。 トム・クルーズが素晴らしいキャリアの持ち主であるのは言うまでもない。長年に渡りトップに君臨し続け、しかも、ここまでスター然とした輝きを放ち続ける俳優は、そうは見当たらないだろう。 正直、本作を観て私は「いまさらトム・クルーズが、この手の作品に出演するのか?」と感じた。エンターテインメントに過ぎる程に特化した、しかも極めてカジュアルな作風の本作。「トップガン」の頃の若かりし時代なら納得は出来る。しかし、それから積み重ねたキャリア、築き上げて極めた俳優としての地位を考えれば超大物トム・クルーズには不釣り合いな作品に思えて仕方がない。 しかし、これこそがトム・クルーズなのだと理解した。演技力がないとか重厚な作品には荷が重いだとか言いたい訳ではない。ただ、アイドル性というのは他の俳優にはないトム・クルーズの大きな魅力であるだろう。 本作を簡潔に言い表わせば、永遠のアイドルであり汚れなき爽やかなヒーローであるトム・クルーズの持つスター性を最大限に活用した作品である。言い換えれば、いつまで経ってもトム・クルーズはトム・クルーズのままで健在であると証明するような作品だとも言えるだろう。 空港で知り合ったロイとジューン。ロイはジューンを自分と同じボストン行きの便に乗せないように工作するのだが、工作は上手くいかずにジューンは同乗してしまう。機内で身の上の話をして仲を深める二人。飛行機が揺れた所為で飲み物をこぼし、服を汚したジューンはトイレに入る。ジューンは僅かの間でロイに恋の予感を覚えていた。しかし、ジューンがトイレにいる間、機内の様相は一変する。機内の客、乗務員すべてがロイに襲い掛かる。それら全員を始末し、終いにはパイロットまでも死なせてしまったロイ。飛行機はロイの操縦で不時着する。ロイはジューンに自分に関わった事で身に危険が及ぶ事、そしてその対処法を教え、さらには薬を飲ませて眠らせて、その場を立ち去った。 本作はアクション、恋愛、コメディーが絶妙なバランスで詰め込まれた作品である。ラブコメディーと称される作品は多く存在するが、本作はそこにアクションが加わったアクションラブコメディーと呼べるような作品だと言えるだろう。 本来ならば、アクションとコメディーの両立は困難である筈だ。コメディーはアクションの醍醐味である緊迫感を薄めてしまう可能性が強い。実際、率直に言えば、本作では緊迫感は損なわれていると言えるだろう。但し、臨場感と迫力を増量させる事で、その分を補っている。特にカーチェイスでの大迫力は本作の大きな見どころである。 コメディーを牽引しているのは、他ならぬ主演のトム・クルーズである。本作でトム・クルーズが演じるのはスパイ。代表作に「ミッション:インポッシブル」シリーズがあるにもかかわらず、違うタイプのスパイ作品に出演する事自体、ユーモアだと捉えて良いだろう。 もちろん作中でもコメディーは炸裂している。スパイと言えば「007」のジェームズ・ボンドだ。ジェームズ・ボンドは、どんな苦しい場面でもポーカーフェイスで乗り切るスパイ。しかし、本作のトム・クルーズはポーカーフェイスどころか満面の笑みで窮地を容易くクリアしてしまう。哀愁を帯びたダンディズムを表現する場を見過ごすばかりではなく、逆手にとって笑いにしてしまおうなんていうのは、まさにコメディーの発想であるだろう。 但し、トム・クルーズだけではコメディーは成立しない。キャメロン・ディアスがトム・クルーズにしっかりと呼応しサポートしているのでコメディーになるのである。 本作がキャメロン・ディアスをヒロインにキャスティングした意義は大きい。飾るだけのヒロインでは本作の趣旨は全う出来なかったであろう。ヒロインとしての器量はもちろんだが、コメディアンヌとしても一流な芸達者なキャメロン・ディアスであるからこそ、アクションラブコメディーが成立している。 決して立ち止まって考えさせられるような作品ではない。但し、ロマンチックな心地良さと痛快な爽快感を与えてくれる作品である。 |
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