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静寂の中に見る人間の魂 過疎化の進む山林に暮らす一家を描いた作品。登場人物は田原孝三と妻の泰代、母の幸子、娘のみちる、そして姉の残していった姉の息子の河本栄介。のどかな一家の生活は鉄道新線のトンネル工事の中止により変わり始める。 無駄な脚色は皆無。俳優陣の落ち着いたトーンでの自然な演技は、あまりにも素朴すぎてドキュメンタリーと見間違う程だ。しかし飾らない演技で築かれる質素な一家の生活は、山林の静かな風景とベストマッチで寂し気な情緒を一層強く意識させる。 その静寂とは対照的に、描かれている人間ドラマの本質はエキセントリックだ。失った希望、困窮した家庭、そして恋。もちろん、どんな人にも、どんな家庭にも事情はある。しかし壁一枚隔てただけで人と隣接している賑やかな都会の暮らしではない。深い静寂が全体を覆っているが故、抑圧しているはずの感情の炎が際立ち、存在感を増す。 派手なエンターテイメント性の微塵もない独特な作風は、通常の娯楽作品と同じ観点で捉えると辛い面もあるかもしれない。しかし、淡々としたタッチで描かれる切ない群像劇は実に味わいがあり、デコレートされていない分、観る者の感性に混じり気なしに訴えかけ、鋭角に胸に突き刺さる。 |
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